躍進のウニオン・ベルリン。好調の要因を探る
こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第82回は、ブンデスリーガで現在好調を維持するウニオン・ベルリンの分析をお届けします。ぜひお楽しみください!
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※本記事は、2022年9月にニナド・バーバディカー氏によって作成された以下の記事をもとに翻訳・編集したものとなります。
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link.medium.com/c586lULaytb/ Analyzing Union Berlin — the team keeping Bayern from the top Urs Fischer’s side are unbeaten and on a roll in the Bundesl link.medium.com
ウルス・フィッシャー率いるウニオン・ベルリンは、ブンデスリーガ第12節の終了時点で首位を走っている。
第7節のアウクスブルクvsバイエルンでは、バイエルンの攻撃陣を見事に防ぎアウクスブルクの1-0での勝利の立役者となったポーランド人GK・ギキエヴィツの活躍が話題になった。この結果、バイエルンと差を広げることができた彼の古巣のウニオン・ベルリンもまた、彼の活躍を喜んだに違いない。
◇ウニオン・ベルリンの得点力
2022年9月21日の時点でウニオン・ベルリンは14得点を挙げており、これはリーグ2位の数字だ。なお1位はナーゲルスマン率いるバイエルン・ミュンヘンで、18点を記録している。
だが、この2チームのゴール期待値(xG)を比較すると、明確な違いが見えてくる。
ウニオン・ベルリンはPKを除いたこの14得点をたった5.2のxGから記録している。なんとこれは、アウクスブルクの4.8という数字に次いでリーグワースト2位のものだ。
今季序盤のxGを遥かに上回る得点を長期的に継続して決めるのは難しく、これがずっと続くことは期待できない。期待値的には「約5点のチャンスから14点を叩き出している」ウニオンの決定力は、いずれは普通のレベルに戻っていくことだろう。
xGをより詳細に見ていくと、ウニオン・ベルリンは今季セットプレーから1点に満たないxGしか記録していないが、ここから4点を挙げている。またオープンプレーでは、xG=4.76ながら10点を挙げている(9月21日時点)。
以下が、今季ここまでのウニオン・ベルリンのシュートマップだ。
彼らの得点の内、ゴールエリアから生まれたものは3点しかなく、これらはすべてヘディングだ。ウニオンは本来得点するのが難しい位置からのシュートを多く決めており、これが今季ここまで彼らのxGと実得点の数値が奇妙なほどにかけ離れている理由だ。
編集部注:直近のボルシアMG戦でも、ウニオンはヘディングで2ゴールを決めている。
彼らの今季ここまでのシュート1本当たりの平均xGは0.06と、リーグ最低の数字になっている。多くのチャンスにおいてウニオンはかなりラッキーだと言えるだろう。彼らはポゼッションに重きを置かず、カウンターからチャンスを作ることが多いチームなので、ゴール前で流し込むだけといった絶好のチャンスを作る機会は少ない。
昨季のウニオンが46.9のxGから45得点に留まっていたことを考えると、今季もこの数字が平均に向けて収束していくことはほぼ間違いない、と言っていいだろう。
◇勢いを増し続けるチーム
だが、それを差し引いて考えても、19/20シーズンにブンデスリーガに昇格して以降ウニオン・ベルリンの勢いはどんどん増している。
クラブはほぼ毎夏選手を大幅に入れ替えながら補強を行っているが、スポーツディレクターのオリバー・ルーネルト主導の補強は的確で、彼らの上昇気流を維持してきた。
直近の夏にウニオンはローンを含めて13人を放出し、10人の選手を新たに獲得。今年もこの傾向は継続している。
だが、監督であるフィッシャーのアプローチはチームを構成する人員にあまり依存しない。これこそ、ウニオンの最もわかりやすい強みの1つであると言っていいだろう。
この2年でウニオンはマックス・クルーゼやタイウォ・アウォニイ、マーヴィン・フリードリヒ、グリシャ・プロメル、ロベルト・アンドリヒといった選手を放出している。後者2人はブンデスリーガ有数のMFになりつつあるし、クルーゼとアウォニイのコンビは20/21シーズンのクラブにおける中心的な存在だった。
xGはどちらかというとより長期的に見た方が精度の高い指標だが、現在のウニオン・ベルリンのxGのトレンドは非常にポジティブに移行しており、彼らがどこへ向かっているかを示している。
世論調査の分析や政治・経済・スポーツブログなどを掲載するアメリカのウェブサイト「ファイブ・サーティエイト」がSPI(サッカーパワーインデックス)という指標を公開している。これはチーム全体の強さを測る指標だが、これを見ても(多少の波はありつつも)ウニオン・ベルリンが一歩ずつ上へと昇っている様子がわかる。
◇シェラルド・ベッカーの話をしよう
今夏にアウォニイがクラブを去ったことで、彼の穴を埋めるのは非常に難しいと多くの人々が考えていた。彼とクルーゼ、そして彼の退団後のシェラルド・ベッカーとのコンビは、ウニオンの成功に欠かせなかったからだ。
後継としてクラブは、スイスのヤングボーイズからジョーダン・ぺフォクを獲得。彼はここまで6試合で3ゴール3アシストと、申し分ない活躍を見せている。
だが、彼よりもより目立っているのは相方のベッカーだ。
彼はウニオンの非常に大きな武器となっており、リーグ戦7試合で6得点3アシストを挙げている。9月21日時点で彼はブンデスリーガの得点ランキング首位となった(レヴァンドフスキとハーランドの2人がドイツ国外へと去った影響もあるだろうが)。
だだし彼もまた、チーム全体と同じくxGを遥かに上回る得点を挙げており、9月21日時点で約1点分となる1.1のxGから6得点を叩き出している。このため、彼がシーズン終盤に得点王争いに絡む可能性はそこまで高くないと考えられるだろう。
だが一方で、1試合当たり0.19のxGからここまでの得点を重ねるというのは、彼が非常に自信をもってプレーできており、勢いのあるストライカーであることも示している。
ベッカーの今季におけるシュートの傾向は興味深い。彼は通常であれば決め切るのが難しいエリアからのシュートも、得点につなげている。また得点を抜きにしても、ベッカーはウニオンの攻撃のアプローチにおいて中心となる存在だ。彼は、相手が空けた裏のスペースを活用することに長けている。
加えてドリブルでボールを前へと運ぶことも出できるため、ボール保持時のウニオンの効果的なパスの受け手となっており、試合中に違いを見せている。
フィッシャーは、FWを中央近くに留まらせ自陣での守備には参加させない一方で、相手のビルドアップ時にはかなり前からアクションを起こさせることを好む。ベッカーはこの数シーズンで何度かパートナーが変わりながらも、その都度この監督の志向するスタイルに合わせ、チームのニーズに適応して見せた。
かつてアウォニイが居た際には、彼がカウンター時の攻撃の主力であったため、ベッカーは得点源となる必要はなかった。だが今季の彼は違う。ベッカーはタイミングの良い走り込みから裏でボールを受けるとそのまま得点につなげられるし、これにより相方のぺフォクにスペースを生み出すこともできる。
◇ウニオン・ベルリンの守備
フィッシャーのウニオンは以前から5バックを用いることが多く、CBはペナルティエリア内を守り切ることが仕事だ。そして、チームがボールを奪った際には中盤を全く経由せず、できるだけ早く前線の選手にボールを届ける。これにより相手を押し下げるという形が、基本的なアプローチとなっている。
非常に多い得点数の陰に隠れがちだが、ウニオンは今季ここまで7試合4失点とリーグ最少失点を記録している。オープンプレーからの被xGはリーグ2位、被シュートもリーグ3位の少なさだ。
編集部注:第12節終了時点で9失点、リーグ最少失点を継続している。
彼らが既にドイツ有数の攻撃力を誇るライプツィヒとバイエルンの両チームと対戦していることを考えると、これは素晴らしい数字だ。 先ほどウニオンのチャンスの質(シュート1本当たりの平均xG)はリーグ最低だと書いたが、ウニオンを相手にしたチームもあまり良いチャンスを作れていない。ウニオンはボールを長く保持しないため、必然的に相手がボールをもち、シュート数も増える。だが、それでもウニオンが今季ここまで対戦相手に質の高いチャンスを作られた回数は少ないのだ。
FBrefのデータによると、ウニオンの被シュート1本当たりの平均xGは0.07だ。彼らの対戦相手が、ウニオンの堅固なミドル-ローブロックの攻略に非常に手を焼いていることが表れている。
ウニオンはディフェンシブサードのスペースをコントロールすることに重きを置いており、前からの積極的な守備にはこだわらない。このアプローチは素晴らしい成功を収めており、まだ7試合だけとはいえ、今季オープンプレーからの失点が1というのは素晴らしい成績だ。これだけうまくいっているのだから、フィッシャーがこのアプローチを変更する理由もないだろう。
ブンデスリーガの他のチームと比べてもウニオン・ベルリンは非常にダイレクトなチームだ。今季が進むにつれて微調整はあるだろうが、まだまだ彼らのトランジションからの攻撃主体の方針は結果を出し続けそうだ。
◇好調はいつまで続くか?
サッカーの歴史を見渡してみても、どれほど(本来のパフォーマンスを上回って)好調のチームもいつかはその波が終わり、平均へと収束してきた。怪我や疲労、その他の要因に捕まってしまうのだ。ウニオン・ベルリンの好調もまた、いつかは終わると見るべきだろう。
今季はW杯の影響で例年とは異なるスケジュールとなっている10月は、ウニオンにとって特に大きな試練となりそうだ。逆に、もしも彼らがリーグ上位のままW杯期間を迎えることができれば、今季彼らは我々に更なるサプライズを見せてくれるかもしれない。
文:ニナド・バーバディカー(@NinadB_06)
英大学でジャーナリズムを学びつつ、サッカーメディア「First Time Finish」の運営や、データグラフィックの作成を行う。欧州複数クラブでインターン経験も。
訳:山中拓磨(@gern3137)
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