【座談会】2024/25プレミアリーグ<昇格組特集>
こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第99回は、 プレミアリーグ昇格クラブのファン・有識者ファンを招いた座談会の様子をお届け!これまでの歩みから2024/25シーズンの展望まで、語っていただきます。ぜひお楽しみください!
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◇はじめに
ついに幕を開けた2024/25シーズンのイングリッシュ・プレミアリーグ。すでに数試合を消化し10月を迎えた。読者の皆さんの応援するクラブはどんなスタートを切っただろうか?筆者BF(@bf_goodison)は、この時期にいつも思うことがある。
「今季の昇格クラブって、実際どうなの?」
私だけではなく、そしてプレミアリーグに留まらず、どの国のサッカーファンも気になる話題だろう。毎年、プレミアリーグでは3つの新たなクラブがトップリーグに挑戦する。近年までプレミアリーグ常連だったクラブ、降格から再び昇格するまで10年~20年も費やしたクラブなど、チームの数だけ様々なストーリーがあるだろう。
そんな今年の昇格クラブは、癖のある顔ぶれが揃った。レスター・シティFC(昨季EFLチャンピオンシップ1位)、イプスウィッチ・タウンFC(同2位)、サウサンプトンFC(同4位/プレーオフ勝者)だ。
ちなみに2024年10月7日時点の順位は、レスター15位、イプスウィッチ17位、サウサンプトン19位となっている。
今回、昇格クラブそれぞれのチームについて熟知したファン・有識者をお呼びし、Xのスペースにてここまでの歩み、チームの特徴などをお聞きした。その濃密な座談会の模様を、本記事でお送りしたい。
⚽️プレミアリーグ開幕が迫る!
⤴️難敵!?昇格クラブ特集!
💐豪華ゲスト4名
@sport98220591 さん
@Japanesethe72 さん
@ragga_remo さん
@BOINGxxBAGGIES さんをお迎え。
さあ24/25シーズン・プレミアリーグを
楽しむための準備をしよう!
📣8/3(土)20時〜開始予定
それでは、今季も1年たっぷりと最後まで楽しむために各クラブの魅力、プレミアリーグに挑む上での展望や意気込みに迫っていこう。きっと今からでも遅くはないはずだ!
【参加者紹介】
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sports(@sport98220591)
レスター・シティファン。ユーリ・ティーレマンス(現:アストン・ヴィラFC)との出会いがきっかけでクラブを応援。レスターラジオ(Xスペース)、現地記事を翻訳した情報発信、「レスター新聞」の制作など、クラブの魅力をたくさんの人に知ってもらうため精力的に活動中。 -
EFLから見るフットボール(@Japanesethe72)
EFLと言えばこの人!イングランドの2・3・4部リーグにあたるEFLを熱心に追いかけるあまり、昨シーズンはイギリス・バーミンガムに移住し、バーミンガム・シティFCのサポーター・オブ・ザ・シーズンを受賞。フットボリスタを始め、各媒体での情報発信などで活躍中。今回はイプスウィッチファンではないものの、愛着のあるクラブとのことで登場。 -
れも(@ragga_remo)
サウサンプトンのファン。初のEFLチャンピオンシップ、さらには昇格をかけたプレーオフを勝ち抜いて涙(?)のカムバック。歓喜の瞬間をEFLファンが集う観戦会で迎えることができた。今季、日本人選手の加入もあり、セインツの魅力を届けるため座談会へ参戦! -
サスーン(@BOINGxxBAGGIES/EFLスペシャル・アドバイザー)
今回の企画開催に向けて、昇格3クラブを熱く語ることができるスペシャリスト3名を紹介してくれた“EFL沼の住人”。界隈ではお馴染みのスペース、#EFLチャンピオンシップハイライトショーを実施し、EFLファン憩いの場となっている。ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンFCのファン。
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BF(@bf_goodison)
座談会の司会・進行を務める。エバートンFCファン。
◇昇格までの道のり
BF:まずは、激動の昨シーズンを皆さんに振り返っていただきましょう。2023/24のプレミアリーグでは昇格組が苦戦する結果となりましたが、その間EFLチャンピオンシップではどのような戦いぶりだったのか、お伺いしていきたいと思います。
では、まずは昇格プレーオフを勝ち抜いたサウサンプトンについて、れもさんからよろしくお願いいたします。
【サウサンプトンのここまで】
れも:チャンピオンシップの順位としては4位でした。プレーオフに挑むにあたり、3位ではなく4位だったことから多少の不安はありましたね。結果として、プレーオフではウェンブリー・スタジアムで無失点で勝つことができ、非常に大きな財産になったと思います。
ですが、レギュラーシーズンで考えると波瀾万丈なものでした。実は、23/24のセインツは開幕から4連敗したんです。守備が安定せず、新任のラッセル・マーティン監督がやってきて、戦術を落とし込むのに少し時間がかかったと思います。開幕直後は主力が引き抜かれたりも……。
「セインツと言えばジェームズ・ウォード=プラウズ」という印象の方も多いと思いますが、昨シーズンにウェストハム・ユナイテッドFCへ移籍しました。クラブのアイコンがいなくなってしまうのは心理的にも影響が大きく、開幕直後は不安がありましたね。
れも:転機が訪れたのは2023年の9月末、セント・メリーズ(ホーム)でのリーズ・ユナイテッドFC戦でした。当時リーズは僅か1敗しかしていなかったのですが、3-1で完勝し、ターニング・ポイントになったゲームだったと思います。
そこから2024年2月14日にブリストル・シティFCに敗戦するまで16勝6分、22戦無敗の道を突き進みました。攻守が噛み合って得点も量産、見ていて気持ちがいいフットボールだったと自覚しています。
BF:一気に昇格街道に乗ったような、好成績が続いたんですね。
れも:中盤戦においては、間違いなくうちがトップだったなと感じていたのですが、シーズン終盤が問題でしたね。勝ちきれない、連勝してもそのあとにすぐ連敗してしまう。いの一番に優勝争いから脱落してしまったのが厳しかったです。4月末の最終盤、昇格のライバルだったレスターにホームで0-5という大敗を喫しました。ガーナ人のFWファタウにハットトリックを決められまして……。
EFL:ちなみに、私その試合にいましたよ。レスターのアウェイ・エンドで……。
一同:(笑)
れも:見てる方としても、もちろんプレーヤーとしても胃が痛いであろう試合でしたね。
そして、昇格プレーオフを迎えました。サスーンさんのサポートしているクラブ、ウェストブロムと戦いまして、2試合ともクリーンシートで昇格を勝ち取りました。
サスーン(以下、サ):ああ~、記憶が!不思議なことに何も覚えていない!!
れも:(笑)。プレーオフ決勝ではEFLファン界隈の皆さんと一緒に観戦会で見させていただいて、なかなかセインツを応援している人は少ない中で、昇格を勝ち取れて良かったですね。サポーターとしても嬉しかったです。総括すると大波に乗ったかのごとく、浮き沈みの激しいシーズンでした。
BF:大波があったにせよ、ちゃんと勝ち抜いてきたチームだったんですね。新しい監督を迎えた中でのシーズンでもありましたし。
れも:そうですね、1年を通してみんな成長したと思います。
BF:サウサンプトンの1シーズンを振り返っていただきました、ありがとうございました!
さて、続いてのイプスウィッチに関しては、この1年の振り返りだけでは足りない部分もあるかと思います。EFLから見るフットボールさん、よろしくお願いします!
【イプスウィッチのここまで】
22/23シーズン、League Oneで98ポイント。23/24シーズン、チャンピオンシップで96ポイント。実に12年振りとなる連続昇格の快挙、イプスウィッチが新たな伝説を作りました!
EFLから見るフットボール(以下、EFL):長い話で……前回イプスウィッチがプレミアリーグにいたのは2002年なんですよね。日韓W杯の年です。
サ:わあ、生まれてなかったです~!
れも:冗談よしてくださいよ~。
サ:はい、中学生でしたね(笑)。
EFL:まあ、そうなんです……私自身も知らないし、観たことがない。チャンピオンシップに長年いて、リーグ1に落ちて、そこから連続昇格で昇ってきた、というのがこの22年間ですよね。
BF:22年ですか……。
EFL:当時は今ほどパラシュート・ペイメント(降格による経営状態の悪化、破産や経営破綻を防ぐための救済措置制度)の影響が強い時代でもなかったですし、ロイ・キーンが監督だった頃はかなり資本を投資して運営をしていました。当時のオーナーはマーカス・エヴァンスという人が長い期間務めていましたが、だんだん疲弊していってしまって、2010年代になるとリーグの中では予算的にも下のチームになっていましたね。
その中でもミック・マッカーシー監督が頑張りプレーオフに何度か絡んだり、といった活躍はありました。そのマッカーシーが辞めた18/19シーズン、チームが崩壊してしまって最下位で降格。そこからまた2シーズンはポール・クックが監督をやっていましたけど、元々のスタジアムのサイズやファンベースのサイズを考えると、完全にアンダーアチーブメント(期待を下回る結果)を繰り返していたチームですね。その間にライバルのチームがプレミアリーグに行ったりもしていたので、ファンとしては忸怩(じくじ)たる想いが続いていた、というのが2021年までの話です。
それが変わったのが2021年の4月。新しいアメリカ資本のオーナーに代わったんです。「GameChanger 20」という何ともアイコニックな名前のオーナーグループです。彼らが入ってきて、しばらくはクックが監督を務めていましたが、2021年12月に今の監督であるキーラン・マッケンナが招聘され、これが彼らにとって初めての人事でした。その前にはダイレクターにマーク・アシュトンというブリストル・シティでやっていた人が入ってきたりと、完全に体制が変わりましたね。
このシーズンにマッケンナが就任した後は、かなり守備を引き締めて引き分けのゲームを続けて終わったんですが、その次のシーズンに98ポイントを獲って2位……。98ポイントで2位という、この22/23シーズンのリーグ1はすごかった!
というのも、最後の方でとんでもない成績を残したんです。15試合13勝2分けで45得点4失点と、凄まじい戦いぶりをしていました。ボールを完全に支配して、攻撃にものを言わせるチームが完成し、そこから昇格しての昨シーズンでした。
自慢したいわけではないですが、昨季の開幕前から私に限らず、ちゃんと見ている人はイプスウィッチを昇格候補に挙げる人も多かったんです。戦術的なことは後でも述べますが、戦い方もかなり変えて、言わずと知れたパラシュート・ペイメント3チームと渡り合って優勝争いを演じ続け、結果的には2位で昇格したというのが彼らのストーリーですね。
BF:チャンピオンシップに上がる、となったタイミングのシーズンで「次も行ける!」という雰囲気があったんですね。
EFL:そうですね。ただ、日常的にあることはないですし、確かイプスウィッチの前にそれを達成したのがサウサンプトンじゃないかな……。
れも:そうですね!ナイジェル・アトキンスの時、オックスレイド=チェンバレンがいた頃ですかね。
EFL:その時と今はチャンピオンシップはリーグ自体もう別物ですね。たとえば今年、ポーツマスFCがチャンピオンシップに優勝チームとして上がってきます。けれど、ポーツマスが優勝争いに絡むかというとそんなことはないと思いますし。
れも:NOだと思ってます!ライバルクラブなので(笑)。
一同:(笑)
BF:長い期間でのターニング・ポイントをお話しいただきましたが、イプスウィッチはプレミアファンからすると本当に未知数で楽しみなんです。一方で、「やはり怖いな」という印象もありますね。
EFL:多分、普段プレミアリーグを中心にご覧になっている方々からすると、イプスウィッチのメンバーを見た時に「誰?」ってなると思うんですよね。結局3部からの連続昇格を、特にメンバーは変えずにやってきているので。この夏、彼らがどのように移籍市場で動くか、というところにつながってくるわけです。そこも素晴らしい動きをしているので、この後お話ししたいと思います。
買収以後はスマートな経営をクラブとしてやっているからこそ、かつキーラン・マッケンナという監督の並外れた能力があることによる、とんでもない偉業ということは先に言っておきたいです。
サ:昨シーズン前に、日本のEFLファンの皆さんと順位予想をやりまして、フッさん(EFLからみるフットボールさん)だけがイプスウィッチの優勝を予想していたんです。それ以外は「なんか、イプスウィッチ良いんでしょ?」という曖昧な情報で高めの順位にしている人たちはいたんですよ。でも本当にあやふやな情報だったので、開幕してから度肝を抜かれました。
BF:話には聞いていたけど、想像以上だったと。
EFL:でも、私は「優勝」予想だったので、外れています。
BF:プレミアでどのくらい通用するのか今季注目のイプスウィッチ。非常に楽しみなお話でした。
【レスターのここまで】
BF:続いては、そのイプスウィッチの上に立った、レスターについてsportsさんに聞いていきます。よろしくお願いします。
sports(以下、SP):まず、22/23に降格したことでチームの軸となっていた多くの選手が退団しました。有名どころだと、トッテナム・ホットスパーFCで10番を背負うジェームズ・マディソン、ニューカッスル・ユナイテッドFCのハーヴィー・バーンズ、フラムFCのティモシー・カスターニュ、契約満了で去った僕の好きなユーリ・ティーレマンス(現:アストン・ヴィラ)とか。
強制的にブレンダン・ロジャース時代の遺産がなくなったということで、本当にどうなるんだろう、2年連続の降格もあり得るんじゃないか、という不安から始まったシーズンでした。
ここまでロジャースが成績を残してくれたんですが、最後は残念な形で……ディーン・スミスが引き継いで頑張ってくれていたのですが降格してしまいました。その後、マンチェスター・シティFCのペップ・グアルディオラの元でコーチをしていたエンツォ・マレスカを招聘しました。ちなみに、レスターは当時「イプスウィッチのマッケンナを採用したらいいのではないか」という記事が出ていましたね。
そこからプレシーズンが始まり、積極的な補強が目立ちました。降格したにもかかわらず、トッテナムからハリー・ウィンクス、日本人の鈴木唯人も活躍するデンマークのブレンビーIFからGKのマッツ・ハーマンセンを獲得したり、モンペリエHSCのステフィー・マヴィディディ、スポルティングCPからローンで加入したアブドゥル・ファタウ。この4人が補強としては本当に大きかったです。
また、21/22にサウサンプトンから獲得したヤニク・ヴェスタゴーアという大きなDFがいるのですが、ビルドアップでマレスカ戦術の肝になるくらいの活躍を見せました。
チャンピオンシップ序盤は苦戦しましたが、勝ち点を積み上げ、シーズン途中までは歴代勝ち点を更新するのではないか?というくらいの勢いがありましたね。
ウィルフレッド・エンディディを、プレミアファンの方はご存知だと思うのですが、刈り取り屋のイメージがあるのではないでしょうか。しかし、彼がマレスカのもとではアタッカーに変貌しました。さらに今夏チェルシーへ移籍しましたが、KDH(キアナン・デューズベリー=ホール/現:チェルシーFC)のMVP級な活躍もあり、こうして勝ち点を順調に積むことができました。
ところが2月~3月頃に、急に負けや引き分けが増えた時期がありました。マレスカって結構物申すタイプの人なんです。これはサポーターも悪いのですが、勝ち点を稼いでも試合内容、戦術に納得しなかったわけです。
ボールを運ぶスピードや展開が遅く、前に積極的に行かず、横にボールをつないでポゼッションを高めることで失点を減らす。一方、ミラクル・レスターの頃はカウンター主体で、最後はヴァーディが決める。それでファンは訓練されているので、マレスカのスタイルをあまり好まない人たちと衝突するような、試合後にサポーターへ苦言を呈したりと、まさかの事態はありましたね。
終盤にそのような厳しい期間もありましたが、サウサンプトンに5-0で勝利したゲームがあったりと、見事優勝を果たすことができました。レスターはサウサンプトンを得意にしているんですが、リーズにはシーズン・ダブルをくらったりも……。
れも:プレミアから降格した3クラブは三角関係だったんですよ(笑)。3チームがそれぞれにシーズン・ダブルを達成しました。
BF:その中で2クラブが昇格できたんですね。
SP:3すくみというか、ジャンケンみたいなことになっていましたね(笑)。
BF:レスターは主力の放出がありながら、的確な補強もあったというお話でした。サスーンさん、レスターは選手の名前が強いですね。
サ:でも、僕からすると「ペリーの黒船来航」はこんなマインドだったんだろうなと。なんか、とんでもない奴らが来ちゃったんだけど……って。しかも、とんでもない奴が3チームですよ。
BF:レスターに限らずということですね。僕でも知っている選手が残っていますが、それでも勝ち上がるのは簡単ではないですし、大変なリーグですよね。
EFL:これは私の印象ですが、レスターは“個の能力”で勝ったチームというよりは、“チーム力”で勝ったチームですね。シーズン前のレスターのスカッドを見た印象は「全然整備されていない」し、「この選手がチームを勝たせる」って人はいないな、と思ったんですよ。
じゃあ、ヴァーディがそういう選手かというと違うし、ファタウもまだ若い選手だしその当時は実力も知らなかった。デューズベリー=ホールが唯一そういう選手になりうるかも、とは思いましたが。結果的にレスターって勝ってはいたけど、ずっと内容は良くなかったんです。
その時にポイントを拾えたのはデューズベリー=ホールの力はありましたが、結局1番大きいところは何か?というと、マレスカが彼のスタイルを頑なに曲げずに貫き通した。たとえばリカルド・ペレイラを絶対に真ん中で使うんだ!というような、スタイルを徹底したことが大きかったと思います。
BF:マレスカの力が大きかったと。そんな中、今季は指揮官が変わってしまうことになりましたがその辺りもこの後お聞きしたいと思います。ここまでチラホラとお話が出てきましたが、続いては各クラブのチームスタイルについてお伺いしていきましょう。
◇チームスタイルと夏の動向
【サウサンプトン】
BF:先ほどから監督や選手の名前が出てきていますが、チームのスタイル、ストロングポイントなどをお話いただきたいと思います。では、まずはれもさんからサウサンプトンについて、よろしくお願いいたします。
れも:まずは監督のご紹介から。ラッセル・マーティンという監督です。スコットランド人、昨季降格してからの就任で今年2年目となります。
BF:ノリッジなどでプレーしていた方ですよね。
れも:DFの選手でしたね。契約延長もして、プレミアリーグに挑戦する形です。
チャンピオンシップではポゼッション・スタイルで、低い位置からのビルドアップをメインとしていました。“かなり低い位置”で、GKとCBがほぼ並列に並ぶ形。イメージしてもらうとするとデ・ゼルビのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCに近いと思います。ビルドアップは4-2-2-2を軸に、SBはワイドに開きます。
さらに相手の陣内に入るとCB2枚を後方に残し、SBはインナーラップで中にポジションを移し、アンカーと3枚横並びになってCBと三角形を作ります。残りの前線は流動的に5枚が動いて全体で持ち運ぶ、押し上げるような布陣でした。非保持では超ハイバックライン、ポゼッションとカウンターを融合させる、即時奪回を目指す戦術ですね。
れも:昨季いなくてはならなかった存在、ウェストハムからのローンを経て今季完全移籍したフリン・ダウンズという選手がいます。4-3-3のアンカーを担い、ビルドアップ、パス回し、ボールを刈り取る役目、色んなところに顔を出せる、非常に幅の効くプレイヤーですね。おそらく、彼がいないとサウサンプトンは崩壊してしまうと思うので。降格時とは別のチームになって昇格してきた中で、チームの心臓となれる選手です。
ウォード=プラウズはいなくなりましたが、セットプレーにも注目していただきたいと思っています。今季オランダのAZアルクマールから加入した菅原由勢がいきなりプレースキッカーを任されて、味方のお膳立てをしていたり、早い段階から信頼を得ていると思います。後は、セインツの調子がよかった3年前ほど前にはイングランド代表に選ばれたウォーカー=ピータースもいますし、チャンピオンシップでも残ってくれた主力がいるのは非常に大きいですね。
ララーナの落としを見事なダイレクトボレー!
日本代表DFにとって #サウサンプトン 移籍後初ゴールに。また、クラブにとっても今季プレミアリーグ初得点となった。
🎥:@UNEXT_football
れも:一方で退団したスコットランド代表の2人、ここが抜けたのが大きいと思います。スチュアート・アームストロング、そして引く手数多だったシェ・アダムス。アダムスはチャンピオンシップで16ゴールを挙げて、プレミアリーグで実績のある選手だったので……。ウィークポイントかなと思います。ただ、加入した選手も非常に多いです。
れも:昇格したら買取義務が発生する契約で、ビルドアップの上手いマンチェスター・シティ出身のハーウッド=ベリスや、バーンリーFCから経験のあるチャーリー・テイラー。そして日本代表の菅原、彼はセインツとしては歴代4人目の日本人ですかね。一旦はトルコのギョズテペSKにレンタルとなりましたが、松木の獲得もありました。
そしてビッグ・ネームであるアダム・ララーナが10年ぶりに復帰。個人的に1番重要な補強ポイントだったFWにはベン・ブレレトン・ディアス。彼はブラックバーン・ローヴァーズFC時代に、現セインツ所属のアダム・アームストロングとペアを組んでいて得点を量産していました。この再会に期待ですね。
まとめますと、今季に関しては気持ち悪いくらいのポゼッション・スタイルを魅力としていきたいですね。
BF:それをプレミアリーグで貫いていけるか?というところがポイントになりそうですね。
サ:すごく良い夏を過ごしていますよね。日本人選手の加入で注目も集まるところですが、まずはやらなきゃいけなかったダウンズの完全移籍での獲得ですよね。僕はダウンズのいる試合、いない試合の勝率の話が好きなんですけれども……。
※ダウンズがいた試合:25勝7分4敗、ダウンズがいない試合:5勝4分9敗
れも:そうなんです……。
BF:まさに生命線ですね。他のクラブもそれをわかっていますから、ダウンズ潰しが始まるんじゃないでしょうか?
サ:どうなんでしょう、タフな選手ではありますよね。
れも:意外とタフで、怪我してもすぐに戻ってきてくれます。ダウンズの控えにも、シェイ・チャールズというマンチェスター・シティ出身の選手もいますし、見どころになると思います。
EFL:でも、フリン・ダウンズは相当今年頑張らなきゃいけないと思いますよ。ウェストハムでステップアップに失敗してますし。こういう選手っているんですよね、チャンピオンシップとプレミアリーグの間にホット・スポットがあるような選手です。
サ:僕らにとってはお馴染みですよね。
EFL:昨シーズンの重要性はもちろんあるんですけど、まあ、がんばれ!って感じですね。
一同:(笑)
EFL:ちなみにラッセル・マーティンはプレミアに昇格したからといってスタイルは変えないと思いますよ!マーティンは本当に頑固な監督なので。
れも:それが吉と出るか、凶と出るかはまた別の問題だと思いますけどね。
EFL:まあ、だから毎年守備がよくない時期があるんですけど……。私はラッセル・マーティン歴の長いファンなので(笑)。
れも:おっしゃる通りだと思います。
【イプスウィッチ】
BF:さて、続いてはイプスウィッチについてお聞きします。
#IPSFUL gallery. 📸⤵️
EFL:マッケンナのスタイルは2つあるんですよね。リーグ1の時は3バックだったんです。3-4-2-1。22/23シーズンのパス数、パス成功数はリーグ1でダントツ1位だったと思います。前でボールを停めて、シーズン後半は相手に(ゴール前の低い位置まで)毎試合引かれてしまって、それだけの攻撃力を持っていたんですよね。ここをどう崩すかというフットボールをしていました。
そこから昨シーズン(23/24)は4-2-3-1だったんですよね。これにはリーグ全体の傾向も関係していて、昨シーズンのチャンピオンシップではとにかく4バックが流行ったんです。そしてストライカーではなく、ウイングの選手が点を取る。「ワイド・フォワード」と私は呼んでいるんですが、ウイングの選手が得点源になるようなチームですね。これはコンパニ(元:バーンリー監督)の影響が結構大きかったと思います。
4バックが大半となった中で、イプスウィッチもそうなりましたね。ただ、その中で一つ言えるのは、イプスウィッチの(22/23)3部での圧倒的な経緯があった一方で、チャンピオンシップでは自陣に引くチームが減るだろう、との予測が彼らの上位予想をした一つの理由でした。でも、昨シーズンのイプスウィッチは対策される前に先手を打った形、戦い方が変わったんです。仕掛けられた罠を見越して、チームの柔軟性で戦い方を変えた、それが如実に表れていたパス関連のデータがあります。
去年のイプスウィッチのパス成功本数が、リーグ10位です。ちなみに上位にはサウサンプトンやレスターやリーズがいるんですが……。さらに面白いのが、パスを累計別に分けると、ショートパス成功数が11位、ミディアムパスが10位、ロングパスが13位なんですよ。全部、真ん中あたり、こんなチームって珍しいですよね。たとえば、チームのスタイルを現したグラフがあります。
EFL:ボールを速く運ぶ縦の象限、パスを多くつなぐ横の象限とあって、グラフの右下にはボールを頻繁に持っているチーム、イプスウィッチの場合はちょうど真ん中あたりに分布されているんですよね。つまり、それだけの方法論を持っている、ということですね。
BF:面白いですね!偏っていない。相手によって変えていると。
EFL:まさにそういうことです。原則的な攻め方としては一緒です。簡単にいえば3-2-5ですね。
CBが二人いて、ライトバックがその最終ラインに入ってDFが3枚、一列上がった真ん中にはサム・モージーとマッシモ・ルオンゴがタイトにポジショニング。レフトバックのリーフ・デイヴィスという選手がとにかく高いポジションを取ります。ボール保持時の原則はマッケンナが就任した当初から変わっていません。彼が軸となり、キャリー能力に優れていますし、左ウイングのオマリ・ハッチンソンが中に入って連携したり。攻め方という意味では、去年はかなり幅を見せていました。オーバーラップやアンダーラップを織り交ぜながら数的優位を作りスイッチ・バックして点を取るとか……。パターンは多いです。
原則的な部分はありつつ、マッケンナのチームが実際に見せた色んな姿、これはプレミアリーグで戦う上でも大切なことですよね。
もう一つ戦術に関していうと、攻撃面に比べると守備はとても一貫しています。PPDA(Passes Allowed Per Defensive Actions/パスごとの守備アクション)の値はすごく低いです。チャンピオンシップのリーグで5番目に低い。
先ほどのスタイル、パスの成功数から考えるとすごいことだと思います。リーグ1にいた時はリーグで2番目の低さでした。これをどういう風にプレミアリーグに合わせていくのか。コンパニのフットボールがプレミアリーグの残留争いには激しく合わなかった、そういうことはマッケンナには起こりにくいと考えます。
BF:バーンリーはチャンピオンシップを席巻してきた中での昨シーズンでしたが……。
EFL:バーンリーは私も衝撃を受けました。好きなチームだったんですけど、単純に戦力が落ちてしまったので。イアン・マートセン(現:アストン・ヴィラ)がいなくなったことは大打撃でしたし、若い選手だけで戦うには無理がありましたね。
れも:バックラインはハーウッド=ベリスも重要でしたし……プレミアレベルだと厳しいものがありましたね。
サ:ネイサン・テラ(現:バイエル・レバークーゼン)もいなくなりましたし、左の武器が無くなっちゃったんですよね。
BF:そういう点でいくと、イプスウィッチはここまで戦力をある程度残して昇格してこれたんですね。
EFL:そうですね。夏の補強についても話したいと思います。イプスウィッチはここまで6人を獲得しています(2024年8月上旬当時)。この6人すべてにロジックがあるんですよ。たとえば、ジェイコブ・グリーヴスという選手をハル・シティAFCから獲りました。
5/6 duels won
4 clearances
3/4 aerial duels won
2x possession won
2 fouls won
1 interception
1 shot on target
Looks an excellent signing by @IpswichTown . 👏
#IPSLIV
EFL:左利きのCBです。イプスウィッチが昇格した頃からこの選手を獲ったらいいのにな、と結構な人が考えていたと思います。これはグリーヴスが空中戦も成長していて、さらにレフトバックでも足元の技術があってプレーできる。イプスウィッチの左CBの役割というのはまさにこういう選手なんですよね。年齢的にもリセール・バリューがありますし、プレミアの中堅クラブが狙うのもおかしくない才能です。
あと、日本では悪く言われがちですけどリアム・デラップ。この選手のプロファイルや可能性を考えた時にイプスウィッチが獲るのは理に適っています。チャンピオンシップでは8ゴール。でも、イプスウィッチのCFに求められているのは得点ではないんですよね。
FWにはジョージ・ハーストという絶対的な役割をしていた選手がいます。彼の長所は空中戦やボールを収める能力、そしてプレス、ストライカーとして幅広い動きのできる選手ということ。デラップも去年はハルでストライカーだけでなくワイド・フォワードとしてもプレスをすごく頑張る、ハーストの代わりとしても出場できる。彼もリセール・バリューがある。
そもそも補強の原則として、イプスウィッチは21/22にマッケンナが就任して以来、イギリス国外のクラブから一人も獲得していない。これは、それだけマッケンナの戦術が複雑なんです。3部から2部に上がる時もほとんどメンバーが変わらなかった。選手がすごく成長するんです。移籍がこれだけバブルな状態に、移籍でチームを強くするのではなく、国内の選手というアセットを活用しここまでのチームを作り上げているわけです。
BF:そういったメッセージを受け取れるということですね。
EFL:そして降格した時のことも考えている。おそらく、ルートン・タウンFCがロス・バークリーを獲得したようなケースは起きないと思います。財政的に追い詰めない、かつ若くてリセール・バリューのある選手。
ウェストハムから獲ったベン・ジョンソンはフリーでしたけど、去年デイヴィスの負担が大きかった、左に傾くシステムですね。そこが対策されることも含めて、デイヴィスが出場できないことも想定して連れてきたと思います。右に傾くシステムを柔軟にこなせる、幅を持たせようとしている意図がわかりますよね。お金をそこまで使わずにチーム作りをしている、すべてにロジックがあって面白いですね。
BF:少し前にはノッティンガム・フォレストFCのような補強アプローチもあった中で、その逆を行くような、「作り上げていくチーム」というのが楽しみですね。
EFL:チーム内で育てていくという方針が、今のフットボール界に対するアンチテーゼとして、本人たちにその気はなくても、見てる側としてはそう感じざるを得ない。マッケンナがもっと大きいクラブへ行くべき理由だと思います。でも、マンチェスター・ユナイテッドFCのオーナーにはそういうの我慢できないかな……(笑)。
BF:一時期、チェルシーとかに引き抜かれるような噂もありましたが、そう考えると良かったんですかね?
EFL:まあ、でも私としては正直行ってほしかったんですよね。
コンパニがFCバイエルン・ミュンヘンに行ったようなケースは例外中の例外ですけれど、ロブ・エドワーズ(現:ルートン・タウン監督)は去年のこの時期に「超注目株!」みたいな持ち上げられ方をしましたが、1年後降格した。こうなった場合に彼のせいではない、でも他のクラブから引き抜かれるような立場ではなくなってしまったわけです。コンパニもそう。マッケンナにもそうなる可能性はあると思います。
BF:今しかないチャンスというのもあるわけですね。イプスウィッチの濃さがわかるお話でした。サスーンさんにお願いしていたらどんな話になっていたでしょう?(笑)
サスーン:僕は何より、今日フッさんを召喚したことで本当に仕事をしたな、と。日本でこんなに解像度の高いことを話せる人いないよ、良かった!僕は今日は話さなくて(笑)。でもひたすらレイト・ゴールが多いっていう話をしていたかもしれませんね。昨シーズンはレバークーゼンのレイト・ゴールが話題になったと思うんですけど、イプスウィッチも多かったんですよ。
EFL:やり続けるんですよね、結果的に相手が疲れて終盤にゴールが増えると。もちろん、プレミアではそう簡単にいかないとは思いますけどね。
【レスター】
SP:レスターは昇格3チームの中だと一番オフシーズンの動きが良くなくて……。マレスカ監督がチェルシーに引き抜かれたことが本当に大きく、クラブのリリース時のメッセージも苦情を含んでいて、「長期プロジェクトであなたを呼んだのにチェルシーに行ってしまいましたよね」という意味が込められていたくらいです。
しかもKDH(キアナン・デューズベリー=ホール)という、マレスカ監督のフットボールへの理解度が高かったチームの大黒柱を持っていかれて頭と心臓を引き抜かれたようなものですね。そうした中で次の監督を探さなければということで、ウェストブロムのコルベラン監督や、元チェルシー、元ブライトンのポッター監督を第一候補にして目をつけていたのですが、結局は昨年12月までノッティンガム・フォレストを率いていたスティーブ・クーパー監督が就任しました。
選手の配置や役割をまだ試している段階で、フォーメーションも3-4-3や可変型を試していますが、あまりまだ上手く行っていない状況かなと。クーパー監督は「徐々に良くなっているよ」とは話しているので、そこを信じるしかないですね。
一番何が大変かというと、KDHが移籍したことももちろんですが、中盤の選手が全然足りていないことですね。ウィンクスやエンディディはいますが、ファイナル・サードやチャンスクリエイトでの貢献度について、誰がこの役割を務めるのか探している状況だと思います。
マレスカ監督のフットボールはクセが強かったのですが、クーパー監督がそれを引き継げるかというと違うと思うので。輝いていたエンディディや偽サイドバックとしてビルドアップに貢献していたリカルド・ペレイラもどうなるのか、バックアップにアカデミーの選手を使う必要があるくらい、補強しないとまずいぞ、と感じています。
クーパー監督はサイドの選手が重要な戦術を担うので、マヴィディディやファタウがどれだけ頑張れるのかな、というところがプレミアリーグで戦う上で大切だと思います。FWも深刻で(開幕前時点では)ヴァーディが怪我をしていて、プレシーズンはあまり試合に出られず。
誰が代わりになるのかというと、次に来るのはプレミアリーグで結果を残せなかったパトソン・ダカ、エバートンから昨シーズンに獲得したトム・キャノンもローンの噂があります(座談会後、ヴァーディは戦列復帰。キャノンはストーク・シティFCへローン、ブライトンからのレンタルでファクンド・ブオナノッテや、移籍期限ギリギリにはクリスタル・パレスFCからオドソンヌ・エドゥアールをローンで獲得)。
ジェイミー・ヴァーディ!
37歳、衰え知らずの決定力⚽️
🏆プレミアリーグ 第1節
#レスター v #トッテナム
📺video.unext.jp/league/LEG0000…
頼れるキャプテン、ヴァーディの今シーズン2点目💥
レスターが先制⚽️
🏆プレミアリーグ 第4節
#クリスタル・パレス v #レスター
📺video.unext.jp/league/LEG0000…
SP:この夏は奇跡の優勝メンバー、マーク・オルブライトンが退団、デニス・プラートも契約満了で、アタランタBCからCBのカレブ・オコリ、フラムからWGのデコルドバ=リードなどを獲得しました。
大体お話しするところはこれくらいになってしまって、クーパー監督についてはまだまだわからないところがあるので難しい状態ですね。この後、展望としてはPSR(プレミアリーグの収益性と持続可能性に関する規則)違反の件などについても触れたいと思いますが……そこが心配ですね。
EFL:一つ、今シーズンのレスターについて予想があるのですが……スティーブ・クーパーはシーズン終わる頃にいないんじゃないかな、と。彼はとても大好きな監督なんですよ。よく知ってる監督ですし、厳しい状況の中でスウォンジー・シティAFC時代ではほとんど使えるお金がなかった、ノッティンガム・フォレストでは財政面の問題ではないですが最下位で就任して昇格させた人です。この状況で連れてくるのは理解できます。
ただ、何故マレスカの後にクーパーなのか。マレスカで1年やったならこのスタイルで舵をとるべきではなかったのか、クーパーがあんなにエクスパンシブなスタイルをやるとは思えない。プレミアリーグで残留する、レスターの現在のチームカラーを考えれば合うのはわかるのですが、長期的な継続性としては疑問ですね。
さらに、スティーブ・クーパーはノッティンガム・フォレストのファンとあれだけの関係を築いた人です。直接のライバルクラブです。ポッター就任の噂が出た後の就任で期待値としてもガッカリから入っていますし、フォレストとのダービーではファンからの先入観もあります。チームを率いる助走期間を考えても、いい関係を築けるとは思えないんですよね。まあ、去年私は「マレスカどうなんだろう?」と言って優勝したので、戯言だと思ってください(笑)。
一同:(笑)
BF:レスターの風向きが悪くなった時に、監督がどのような状況になるのか、環境面としても気になるところですね。
SP:レスターって優柔不断なところがあるんですよね。ロジャース監督を切る時も内容がずっと良くないのにすごく渋って、計画性のなさもあると思います。マレスカ監督がチェルシーに行ってしまうと想定していなかったんじゃないかと。次の監督やスタイルについても考えていなかったと感じてしまいますね。
「ポッター監督がレスターに就任する」とファブリツィオ・ロマーノがポストした直後に、テレグラフのジョン・パーシー記者が「クーパー監督決定!」という報道をしたんですよね。そのあとロマーノが自分の投稿を消したんですよね。
EFL:ロマーノはデューズベリー=ホールの移籍先も間違えましたよね。ブライトンに行くと。クラブの周りが混乱している気がしますよね。
SP:ロマーノがどうこう、というよりはレスター自体が混乱している感じですよね。
EFL:ピッチ外の問題がゴタゴタしている。あれだけ訴訟だ、なんだとやっていたらそりゃ影響は出ますよね。昨シーズンずっとやっていましたから。冬の段階で移籍市場でも大混乱していましたし、見ていて可哀そうなところはあります。
BF:sportsさん、僕はとても親近感が湧きますので気持ちはよくわかります……。
SP:エバートンのサポーターの方々もわかると思いますが、ピッチ上で見えないところってとても影響を与えているじゃないですか。レスターは給与の高さも問題になっていますし、本当に解決できるのだろうか、とクラブにはどうにかして欲しいなと考えてしまいますね。
BF:レスターの事情も色々と見えてきたお話でしたね。
※2024年9月3日、レスター・シティは、PSR(プレミアリーグの収益性と持続可能性に関する規則)に「クラブが違反した疑いがあるとして、独立委員会に検討する管轄権がある」とした決定に対する上訴に勝訴。当初噂されていた減点処分を下されることなく、リーグ戦に臨むことができている。
◇24/25シーズンの展望と意気込み
BF:続いては、24/25の展望や意気込みを、それぞれお聞かせください。
れも:サウサンプトンは目標として、シーズン終盤に降格争いをしないことですね。そして、我慢してラッセル・マーティンを使い続けてほしいですね。長期的なビジョンで契約していますし、降格したシーズンは3人の監督が務めていましたし、監督人事がままならないとチームの状況が不安定になってしまいますので。
目指す順位としては11位、12位くらい。ハマるかハマらないか、今のメンバーでも勝負できるとは思っているのですが、監督のスタイルがプレミアで刺さるのか、貫けるのか。ここを乗り越えられるかが課題になってくると思いますね。マンチェスター・シティにどれくらい刺さるのかは楽しみですね。
BF:上位勢にどれほど効くのかは期待したいですよね。
れも:もし、もう1回降格することになってもラッセル・マーティンを起用し続けてくれたらクラブを信じてついていけると思います。もう少し、補強が必要なのではないかという不安も残りますが、結局はこのスタイルが刺さるか刺さらないかだと思います。
BF:ファンとしても監督を信頼して応援できるのはいいですね。
れも:モチベータースキルもあるので選手のケツを叩いて頑張ってほしいですね。監督を信頼しないと始まらないので。
サ:れもさん、ぼくから少し伺ってもいいですか?マーティンを信頼し続けるというところで、サウサンプトンのダイレクター業って誰がやってるのかな?って。ほら、ジェイソン・ウィルコックスが引き抜かれたじゃないですか。
れも:もう、やめてくださいよ〜。基本的にはスポーツ・リパブリック社がやっているはずです。
サ:レスターもマレスカやKDHが引き抜かれた中で、サウサンプトンのこの話題にも触れておかなければと思いまして。マーティン監督を連れてきたのもこのウィルコックスだったと思うので。
れも:そうです。ただ、このウィルコックスを連れてきたのもスポーツ・リパブリック社ですね。マンチェスター・シティのユース産の選手がたくさんやってきましたので。
サ:元シティのアカデミー・マネジャーというような役割だったとも思いますし、そういう計画での目論みからサウサンプトンの戦略も変わってくるところですよね。
れも:ただ、若手を採用する軸は変わっていないですし、あまり心配していないところではありますね。ロニー・エドワーズやネイザン・ウッドだったり、松木のローン先も同じスポーツ・リパブリック社のクラブであるギョズテペだったり。組織ぐるみで監督の意見も入っているので、しっかり現場の意見が通っている移籍の動向だと感じますよ。
サ:ありがとうございます。そこだけどうなっているんだろう、と感じていましたので。
おかしいな、ガヤの予定だったのに真面目なことを聞いてしまった(笑)。
BF:いや、貴重な情報をいただきました、ありがとうございます!続いてイプスウィッチですが……。
EFL:これはイプスウィッチのファンじゃないから言えることだと思いますが、イプスウィッチは昇格組の3クラブで一番残留の可能性が高いと思います。理由はここまで挙げた通りですね。レスターについても同様ですし、サウサンプトンに関しては降格したシーズンの動きと被る部分もあって。若手を獲りすぎて……ラッセル・マーティンも特殊な監督ですし、ウィルコックスはスウォンジーと大喧嘩してまでマーティンを連れてきた人であったり、長期的な目で最終的に見れば同じ意見で残留よりも大事なマーティン監督起用を我慢してほしいと思います。
イプスウィッチは過去にマッケンナがプレミアリーグで1試合も指揮していないのにこれだけ期待値が不要に上がっている、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、ブライトンといったチームからも声がかかるとても難しい状況です。額面上の戦力で言えば降格候補筆頭ですが、こういった状況に対してどのように対処していくかが非常に楽しみですし、マッケンナはそれを乗り越えてくれると思っています。
マッケンナもそうですし、マーティンもそうでしたけど、すごく複雑な家庭環境で育っていて、ストロング・トーカーなんですよ。彼らが宗教観だったり、人生観の話をするのが大好きなんですけど、こういうキャラクターを持った監督がプレミア初挑戦。世界最高峰の舞台でどのように融合していくかも楽しみですね。
BF:プレミアファンからすると未知数のイプスウィッチですけど、今日聞いてくださった皆さんは色々とイメージでき、期待するポイントも見えてきたんじゃないかと。
EFL:こういう話を聞いた後に、仮にイプスウィッチが最下位に終わりました、となったら「やっぱりイプスウィッチ弱かったね、マッケンナ騒がれていたけどハイプだったね」と、事前情報がないとそう思っただけで終わりだと思います。でも「そういうことだったのに、成功しなかったのは〇〇だったんだね」と仮説を立てやすいですし、下からの連続性を知ることって大切だと思います。そのほうがやっぱり楽しいですからね。
BF:視野も広がりますよね。今のマーティンとマッケンナのお話もいただいたところで、レスターは心配な部分も多いかもしれませんが、sportsさんは展望としていかがでしょうか?
SP:はっきり言えば目標は残留一択です。勝ち点剥奪がかなり可能性として高い状況でもあります。エバートンやフォレスト同様の処分を受ける可能性がある。レスターは財政問題を抱えているので、残留できれば万々歳、何なら降格した後のことも考えて動いてほしい、というのが暗い話ですけど、ずっと思っているところですね。
クーパー監督は若手の指揮や育成にも定評があるので、ファタウなど若い選手を覚醒させるような、希望のあるシーズンにしてほしいですね。またカウンター志向を復活させてくれたら、サポーターも嬉しいんじゃないかと思います。
後は個人的な話ですが、レスターとルートン・タウンって良い因縁があるんですが、ルートンからいただいたジャスティンという重要な選手がいて、KDHもルートンにローンしたことでかなり成長して帰ってきてくれてチャンピオンシップで優勝することができましたし、できればルートンと一緒にプレミアリーグで戦いたかったです。ジャスティンやKDHがルートンのホームで戦う光景を観たかったのですが、ルートンは降格するし、KDHは移籍してしまって……寂しい気持ちはありますね。
BF:なるほど、ありがとうございます。財政問題のことは情報を仕入れるのも大変ですし、純粋に試合を楽しむことも邪魔されてしまいますし……。
EFL:最近、Swiss Rambleの報告にもありましたが、とりあえずこの夏に関してはKDHを手放したことでこれ以上の売却・放出を強いられることはない、とのことです。あれだけの金額で手に入れたこと、マレスカ自体にも違約金が発生している、チェルシーとしては足元を見ることもできたし、逆に言えばマレスカは古巣の財政事情を理解していて、レスターを助けてあげたとも捉えることができますね。
BF:そういった両面もあるわけですね。サスーンさん、ここまで3チームの展望を聞かせていただきましたが、みんなプレミアで生き残れるでしょうか?
サ:そうですね、僕らしいことを言わせていただくと、この3チームは本当に強かったんですよ、リーズも含めて。その4チームがいなければウチがチャンピオンシップで優勝していましたからね!
れも:そりゃそうでしょう(笑)。
サ:強いチームには帰ってきてほしくないですよ。あれだけ強かったあなたたちでも太刀打ちできないって、プレミアリーグってどうなってるの?と。プレミアで干乾びてどうしようもなくなったクラブに落ちてきてほしいので、ぜひ上がった皆さんには頑張っていただきたいです。
れも:セインツに関しては4位からの逆襲っていう一番タフな上がり方をしているので、簡単に落ちるなんて言っちゃダメなんですよね。しがみついてやる、という気持ちはどこよりも強いです。
BF:意地でも蹴落として、生き残ってやるぞ、という想いですよね。
◇まとめ
BF:最後に、みなさんにクラブの魅力と今季の意気込みについて一言いただきたいと思います!
れも:日本人選手を獲得して、菅原に関してはヨーロッパのトップクラブであり代表選手、松木は本格的には来年以降の加入にはなりますが、Jリーグからの参戦、セインツの魅力としてとっつきやすいところだと思います。高岡についてはまさかの高校サッカーからアンダーカテゴリーに加入、プレミアリーグのチームに同時に3人の選手が在籍することは中々ないですので、日本から注目して欲しいと思っています。
れも:そしてラッセル・マーティンのフットボールを楽しんでいただきたいですし、生まれ変わっていますので心機一転、新生セインツをよろしくお願いします!
EFL:イプスウィッチの魅力は、やはりエド・シーランじゃないですかね。ユニフォームのスポンサーもやってますし。エド・シーランから入るのが良いと思います(笑)。
EFL:ロンドンからもそんなに高くない電車一本で行けますし、海も近いところ、イースト・アングリアというところにあります。久しぶりのプレミアリーグ、ファンの熱意も高い、見応えのあるチームです。
そしてEFLに関しても平河(町田ゼルビア→ブリストル・シティ)、大橋(サンフレッチェ広島→ブラックバーン・ローヴァーズ)といった日本人選手も参戦し、Jリーグサポーターの方々も興味を持っていると思います。クラブのホームページをチェックしたり、EFLを見てもらえたら色んな世界が広がっていて面白いですよ!
footballista.jp/special/188770
2023年夏の移籍市場からGBEに関連する新ルールが導入された。これが「ESC」枠の追加で… 現イングランド代表に19人を輩出!日本人選手も続々挑戦中!「世界有数の下部リーグ」EFL、チャンピオンシップが侮れない理由 - footballista | フットボリスタ 来たる2024-25シーズンは橋岡大樹(ルートン)、坂元達裕(コベントリー)、角田涼太朗(カーディフ)に、大橋 www.footballista.jp
SP:レスターの魅力は、良くも悪くも若くて未完成であること、逆境の時こそ真価を発揮するチームであること。奇跡の優勝したシーズンも実は開幕前に監督交代がありました。
チームが苦しくて、クラブが大変な状況である時こそ、ピッチ上で素晴らしい姿を見せてくれるのではないか、と期待しているので、プレミアリーグファンの皆さんに少しでもそういったところを感じてもらえたらと思います。プレミアに戻ってきて、知られざる才能もたくさんいますし、やはりいいチームだなと思ってもらえるシーズンになって欲しいですね。
BF:本日はありがとうございました!
すでにこの座談会から時間が経過し、激しい争いが幕を開けたプレミアリーグ序盤戦。各クラブの特徴が見えつつ、同時にプレミアリーグの難しさも顔を出すスタートを見せている。長いシーズンの中で上位争いが盛り上がる中、昇格クラブを始めとした下位からの突き上げ、番狂せやジャイアント・キリングが生まれる瞬間はきっと訪れる。
世界最高峰のリーグであっても格差のある時代、そこに何が起こるかわからないからこその面白みがありつつ、今回の座談会を通して知れたこと、考察できる楽しみなど、より深いイングランド・フットボールの魅力に迫るチャンスを得た機会となった。
今回、ご登壇くださった3名のゲスト様、そして貴重な場を作る上でご協力くださったサスーンさん、誠にありがとうございました。24/25シーズン、昇格クラブの健闘を祈りつつ、私たちの応援するクラブとの対戦を思いっきり楽しんでいきましょう!
文:BF(@bf_goodison)
ディ アハト第99回「【座談会】2024/25プレミアリーグ<昇格組特集>」、お楽しみいただけましたか?
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