マッチレビュー アジア最終予選 日本vsサウジアラビア
こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第42回は、2月1日(火)に行われたW杯2022アジア最終予選 グループB第8節のマッチレビューをお届けします。ぜひお楽しみください!
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アジアの国々がカタールW杯の切符を争う予選グループB、前節は中国に2-0で勝利した日本代表。W杯出場圏内の2位をキープしながら徐々に調子を上げているチームにとって、グループの首位を走るサウジアラビア代表に挑むホームゲームは負けられない一戦となった。この試合に勝利すればW杯出場が決まるというサウジアラビア代表を足止めし、直接対決の前に少しでもオーストラリア代表にプレッシャーをかけなければならない日本代表は、埼玉スタジアムで重要な一戦を迎える。
𝐌𝐀𝐓𝐂𝐇 𝐃𝐀𝐘
━━ 🇯🇵
アウェイの借りはホームで返す。
#ともに戦おう🔹
🏆アジア最終予選(#RoadtoQatar)
🗓2/1(火)⌚️19:10KO<日本時間>
🆚サウジアラビア 🇸🇦
📺#テレビ朝日 系列/#DAZN
🔗jfa.jp/samuraiblue/wo…
#jfa #daihyo #SAMURAIBLUE
#新しい景色を2022
◇グループB首位・サウジアラビア代表の狙い
アジア予選において、日本、オーストラリア、韓国、イランと並ぶ強豪国として知られるサウジアラビア。国際大会での経験も豊富なフランス人指揮官エルヴェ・ルナールに率いられた彼らは、グループBの首位をキープしていた。W杯開催国として育成改革に成功したカタールのような「新興国」とは異なり、サウジアラビアは伝統的にアジアの強豪だ。
日本にとっては頻繁に名前を聞くアジア予選のライバルではある。だが一方で、未知な部分も多い。ヨーロッパでプレー経験がある選手はいるが、ほとんどの選手が国内でプレー。韓国や日本、イラン、オーストラリアがヨーロッパでプレーする選手を多く抱える一方、サウジアラビア人選手の市場価値はそこまで高くない。
しかし、国内リーグのレベルアップにも助けられながら、チームとしてのサウジアラビアは育成世代でも結果を残している。2020年のアジアU23チャンピオンシップでは準優勝しており、親善試合で若いチームはメキシコ相手にも善戦。2021年アジア予選で無敗だった彼らは、アウェイの地で2人の主力を欠きながらも勇敢にプレーすることを選択。
FWのサレー・アル・シェフリが負傷離脱し、司令塔のMFサルマン・アル・ファラジもメンバーに入らなかったことで、大きく変わったポイントは攻撃のスピードだった。
32歳のアル・ファラジは駆け引きが得意で、相手を食いつかせながら前を向くようなプレーを好む。プレースペースも広いテクニシャンが下がりながら攻撃を加速させることで、サウジアラビアの快速アタッカーは力を発揮していくのだ。そんな彼の不在で、代役に選ばれたのはモハメド・カンノ。191cmの長身を武器にする「サウジアラビアのポグバ」は技術とフィジカルを兼ね備えるが、クローズな姿勢でのボール保持が多い。チーム全体がゆるやかにビルドアップすることを選んだのは、足下にボールを貰おうとする彼の特性を意識したものだった。左サイドバックがボールを保持する局面ではトップ下とセンターフォワードが左サイドに流れ、連動しながら深いスペースに縦パスを狙うプレーが序盤のサウジアラビアにおける狙いとなった。
しかし、遠藤航の激しいチェックがカンノの自由なボールキープを封じたこともあり、彼らの目論見は崩れていく。また、裏に蹴ろうとするプレーが少なかったことは長友を助け、不調に苦しんでいたベテランを背負ったアタッカーとの距離を潰し、自由を奪うプレーに集中させた。チェゼーナ時代を思い出すような瞬発力と相手を嫌がらせる積極性で、長友は尻上がりに集中力を高めていった。
典型的な「チームとして相手をプレッシングで機能不全に陥らせたプレー」が前半12分~のプレーだ。左サイドの南野が相手のセンターバックに対し、外のコースを切ることで選択肢を限定すると、中央で田中が的確に守備のポジションを修正。外へのパスから中へのパスに意識を切り替え、縦パスのインターセプトを狙う。2人のプレスで連動して相手の自由を奪い、最後は前向きに長友がインターセプトしながら攻撃に移行したプレーは、序盤はサウジアラビア代表にペースを握られていた日本代表にとって反撃の糸口となった。
トランジション局面では、田中の判断が絶妙だった。遠いところにいる伊東のポジションを認知しながら、サウジアラビアのMFがリトリートでスペースを埋めることを優先したことを確認するとキックフェイントを挟みながら加速した遠藤がトップスピードで走ってくるところに「ボールを置く」ようなパスを選択。最短距離を切り裂くようなプレーを好む遠藤にとっては最高のボールで、ショートカウンターで惜しい場面を演出した。
📷#田中碧
✔️グループB・第8節
✔️🇯🇵#日本 2-0 #サウジアラビア🇸🇦
🗓2022年2月1日
#AsianQualifiers #SAMURAIBLUE
コンビネーションや裏へのボール、高さ勝負で嫌らしくプレーされていたら少し変わっていたかもしれないが、オーソドックスな攻撃は日本のディフェンスラインに落ち着く時間を与えた感もある。長友は確実にパフォーマンスを向上させたが、日本側のバランスが改善されたことや、相手のスタイルも考慮しなければならない。ここからも左サイドバックの人選は、森保監督にとっては悩みどころだろう。ゲームを安定させる仕事を期待された中山は不調を感じさせ、何度となくサウジアラビアの突破を許してしまった。急に崩れた中継ぎピッチャーをイメージさせる彼のプレーは、これまで指揮官がパターンとしていた途中交代を使いづらくするはずだ。先発のピッチャーを過度に投げさせ、結果的に疲労した先発が崩れるような流れを防げるのか、というのは残り2試合で気になるポイントだ。こうなってくると、90分間サイドバックをプレーさせてこなかったことが悔やまれる展開も考えられる。
交代で起用された18番のハッタン・バヒーブリはキレ味鋭いプレーで中山を翻弄し、そのポジショニングやフリーランでも終盤の日本を苦しめたが、彼と比べると先発したファハド・アル=ムワッラドは淡白なプレーに終始した。本来はチームの主軸となる彼が不調だったのは、サウジアラビアの攻撃が左サイドに過度に依存する状況を作り出し、日本にとっては助かる展開となった。
そして、ゲームを動かしたのが8番アブドゥレラー・アル・マルキの負傷退場だ。センターバックに近い位置まで下がるプレーとサイドへのフリーランを的確に使い分けていた賢いMFが序盤で交代したことで、サウジアラビアは機能不全に陥ることになる。
◇思考の「異才」、守田英正の躍動
前半20分過ぎ、中盤の交代でバランスが崩れたサウジアラビアを観察しながらMFの守田英正がポジションを調整していく。典型的だったのは、前半23分45秒~のプレーだ。守田はボールを持った右サイドバックの酒井を確認すると、右サイドに流れながらパスを要求。裏へのボールは精度を欠いたが、この瞬間に彼のプレーは完全にサウジアラビアの組織を破壊していた。中盤の守備的MFが守田をマークしようとしたことで守備が手薄になり、DFラインは数的同数になってしまっている。ボールは繋がらなかったが、守田にとって「仕掛けのイメージ」を共有する重要な一瞬だったに違いない。川崎フロンターレの選手たちが他を圧倒しているのはテクニックだけでなく、相手を観察する能力でもある。
起点となるポイントはシンプルで、「相手を見て、自分がどこにポジションをとるか」を決めること。その上で大事なのは、味方1人が自分の立ち位置を決めたとき、それを理解し、反応できる選手が周りに何人いるかです。
理想は常に変化する状況に合わせて、1人の意志・動きに合わせて全員がその意図を汲み取り連動することです。そして、こちらの狙いを相手が封じてきたら、別のところでまた次の手を作っていく。
中村憲剛氏の言葉にはフットボールの真髄が詰まっているが、守田はその観察力で酒井と頻繁にアイコンタクトしながらサウジアラビアを苦しめていった。酒井がセンターバックに持ち運ばせるようにハンドサインで指示した場面では、酒井とセンターバックの間にポジションを取ることで「選手間のリンク」を作りながら酒井を前のポジションに押し出していく。
26分45秒~のプレーは、垂涎だ。守田は酒井をサポートするようなポジションで板倉にボールが戻ったことを見ると、対面するサウジアラビアの選手が前に出なければならなくなったと判断して、彼の死角へと抜けていく。ボディアングルと視野を確保する技術も教科書のようで、前線の動きを確認しながらいつでもワンタッチで前向きでボールを持てるようにしながら、ボールを貰っている。酒井がセンタリングを狙ったが、もう一手、守田へのバックパスでも面白かったかもしれない。守田が右サイドに流れることで伊東が高いポジションで駆け引きをすることを可能にしたことが実はこのゲームにおいて転機だった。伊東が外でボールを待つのではなく、サイドバックの死角となる中からダイアゴナルにスペースを狙えるようになったことで、一気に左サイドの破壊力が倍増したのだ。
先制点のシーンも、徹底的に守田がサイドでサウジアラビアを牽制したことが布石になっている。酒井から伊東へ縦パスを狙う瞬間に「逆のベクトルで動く」守田を相手の中盤は意識しており、結果的に伊東への警戒が薄れているのは大きい。もちろん突破した伊東のプレーは賞賛に値するが、ボードゲームのように手の積み重ねが流れを作る。このゴールは唐突なものではなく、守田が描いたイメージの先にあったものだ。彼にとって無意味な一手はなく、全てがゴールへの布石だった。
ついに決めた🔥🔥🔥
🇯🇵#南野拓実!!!!!
◣_________◢
#伊東純也 の突破から執念で押し込んだ👏👏
⚽AFCアジア予選-Road to Qatar⚽
🆚日本×サウジアラビア
📺#DAZN ライブ配信中
🗣佐藤寿人/野村明弘/岡田武史
#この戦いにすべてを懸けろ
このゲームにおいて、最も重要なフェーズが前半20分~先制ゴールまでの時間だったことは改めて強調するまでもないだろう。
サウジアラビアが中盤の主力を失ったことでトランジションが増え、結果的に日本がセカンドボールの回収率を大きく高めると同時に守田がポジションを調整しながら揺さぶり、結果的にサウジアラビアの組織は崩れることになった。ポジションを弄りながら駆け引きする守田に時間を与えようとビルドアップ側に徹した田中や、意思を理解して連動した酒井の存在も大きい。3~4人が共通理解しながら、展開を一変させた。
🎥試合ハイライト
✔️グループB ・第8節
✔️FT:🇯🇵#日本 2-0 #サウジアラビア🇸🇦
#AsianQualifiers #WCQ #JPNvKSA
◇ポジティブなゲームにおける、一抹の不安
相変わらず守備では遠藤が対人守備で圧倒的なパフォーマンスを披露し、右サイドでは伊東が躍動。南野は少しボールタッチが乱れる場面もあったが、結果的に先制ゴールを沈めたのは大きい。大迫にも復調の兆しは見えており、谷口と板倉も安定したパフォーマンスでチームを助けた。サウジアラビアが主力を欠いたとはいえ、冨安と吉田不在のDFラインで完封したのは大きい。
大きな差となったのは選手層の差であり、地力において日本代表がアジア屈指であることは疑いのない事実だ。しかし、ポジティブなパフォーマンスを続ける日本代表にも全く不安が無い訳ではない。
🏆アジア最終予選(#RoadtoQatar)
🇯🇵#SAMURAIBLUE 2-0 サウジアラビア代表 🇸🇦
⌚️19:10KO<日本時間>
📺#テレビ朝日 系列/#DAZN
🔗jfa.jp/samuraiblue/wo…
#jfa #daihyo
#新しい景色を2022
#サッカー日本代表
サウジアラビアの決定力に助けられたが、相変わらずセンターフォワードがプレッシングで間に合っていない場面で「両サイドのアタッカーがゾーンに戻るのが遅い」という弱点を抱えているのは事実だ。両サイドのアタッカーが中途半端なポジションでプレッシャーにもなっておらず、サイドバックの位置で数的優位を作られている場面は1回ではなかった。両サイドで同じような場面を作られており、オーストラリア戦ではその緩慢なプレーが致命傷になりかねない。大迫のところでボールを追い回せないなら「リトリートしてスペースを埋める」という意識を共有しないと、唐突に崩されることも考えられる。
また、チームの中核となる田中と守田の疲労も気がかりだ。常に献身的なプレーをするだけでなく、思考についてもフル回転を続ける2人のパフォーマンスにチームが依存しているのは事実で、そのサポートをこなせる選手が求められている。FCセルティックで活躍するMF旗手の存在は、チームの最終兵器になるかもしれない。
前半5分の先制点に続き、この試合 2点目を記録!
旗手が2ゴール・1アシストの活躍を見せ、#セルティック が前半で首位・レンジャーズから3ゴール!
🎥:@CBSSportsGolazo
今回のアジア予選において、日本代表は「ゲームを重ねることでチームの型を明確化する」ことに成功している。これは発展途上のチームにおいてポジティブな部分だが、一方で安定感を欠く部分でもある。デザインされたチームというよりも複数人の個性が融合することで自然発生的に生まれる関係性をベースにしているチームは、「相手チームにとっての予測しにくさ」と「不安定さ」を同居させている。
アジア最終予選も終盤、泣いても笑っても残り2試合となった。最優先となるのはカタールW杯の出場権を勝ち取ること。それだけが、日本代表を愛する我々の願いだろう。
✔️グループB ・第8節
✔️FT:🇯🇵#日本 2-0 #サウジアラビア🇸🇦
🇯🇵#日本⚽️
31' #南野拓実
50' #伊東純也
🗓2022/2/1
🏟埼玉スタジアム2002🇯🇵
#AsianQualifiers #WCQ #JPNvKSA
🔥グループB
📋順位表(2022年2月2日現在)
✔️第8節 試合結果
🇯🇵#日本 2-0 #サウジアラビア🇸🇦
🇻🇳#ベトナム 3-1 #中国🇨🇳
🇴🇲#オマーン 2-2 #オーストラリア🇦🇺
#AsianQualifiers #WCQ
文:結城康平(@yuukikouhei)
ディ アハト第42回「マッチレビュー アジア最終予選 日本vsサウジアラビア」、お楽しみいただけましたか?
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ディ アハト編集部
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