「映像自体に不備があった場合」のVAR介入ミスについて考える~セリエAのオフサイド誤審~

セリエAの試合で起きた誤審。VARが介入したことでオフサイドとなったものの、実は使用された映像の画角外に選手がいたのです。今回は攻劇(@kogekidogso)がこのジャッジについて解説。防止策を考えていきます。
ディ アハト編集部 2022.10.10
誰でも

こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。

第81回は、 VARのシステム面が要因となって起きた誤審を取り上げます。VARがいる試合で起こり得る問題を解消するために、必要なこととは?ぜひお楽しみください!

また、購読登録いただきますとディ アハトの新着記事を毎回メールにてお送りいたします。ご登録は無料で、ディ アハト編集部以外からのメールが届くことはございません。新着記事や限定コンテンツを見逃さないよう、ぜひ下記ボタンよりご登録いただけると幸いです。

***

 9月12日に開催されたセリエAのユベントス対USサレルニターナで、物議を醸す判定が発生した。同点で迎えた後半アディショナルタイム、ユベントスに所属するFWのミリクがゴールネットを揺らしたが、VARが介入。結果、ボールに反応したボヌッチ(ユベントス)のオフサイドに修正されたというものである。

 試合後、イタリアの放送局は独自映像を使用しながらこの判定を振り返った。すると、ボヌッチはオフサイドポジションにいなかったことが判明したのだ。というのも、中継映像やVARが用いた映像の画角外にサレルニターナの選手が存在しており、当該選手が本来のオフサイドラインの対象であった。

 そこを基準にラインを生成すると、ボヌッチはオフサイドポジションではなかったのだ。

 つまり、ピッチ上で下された「得点」という判断は正しく、VARが介入したことで誤った判断であるノーゴールに覆ったのだ。この判定は現地メディアを賑わし、ファンからも審判団への批判の声が大きく上がっている。

SPORF
@Sporf
Juventus had a 95th minute winner disallowed last night because VAR only checked for offside on players in the box, ignoring Antonio Candreva playing everyone onside on the wing! 😱🤬
2022/09/12 22:25
319Retweet 2864Likes

 

 誤審が発生した原因は、間違いなくVARが使用した映像にある。VARが使用できる映像は基本的にテレビ中継と同じもののため、判定は中継制作陣のカメラマンがどう映すかによる部分に依存するという課題がある。

 例えば、カメラマン側の技量不足などでとても見づらい映像となった場合、VARがその映像から判定の誤りを発見することは困難だろう。また、経験の多いカメラマンであっても、カメラの性能が低ければ映像のブレが強く発生し、視認性の劣る映像になる場合が考えられる。

 そして今回の誤審は、VARが使用可能な映像にオフサイドライン対象の選手が映っていなかったために発生したことが分かっている。試合後、委員会は調査を実施。この点を発表するとともに、放送局が使用した広角の戦術用カメラはVARが使用不可だったと明らかにした。あらゆるカメラがゴール前にフォーカスしたためVARは誤認し、適切な判定が下せなかったのだ。

 では、映像に不備があった以上、このミスを防ぐことは不可能だったのだろうか?

 この問いについて、筆者は「不可能ではなく、防ぐことができるミス」だと考える。副審はオンサイドと判定しているため、ボヌッチよりもゴール側にいる守備側選手を把握していたと推測される。よって、副審がコミュニケーションシステムを通じて「CKが蹴られた側のタッチライン付近に1人残っていた」とVARや主審に伝えていれば、VARはチェックの段階で当該選手の存在を把握できただろう。

 映像に映っていないため、正確な位置を把握したりオフサイドラインを生成したりはできないが、VARが介入する基準である「はっきりとした明白な間違い」を満たさず、判定修正には至らなかったと考えられる。

 今回のようなミスは、VARを導入しているあらゆる大会で起こり得るだろう。レフェリー間での適切なコミュニケーションが求められる。

 なお、今回の判定によるものではないとされているが、カタールW杯での導入が決まっている「半自動オフサイドテクノロジー」の早期導入にセリエAは動いているようだ。この技術は、機械が自動的にオフサイドポジションの選手を割り出し、審判員はオフサイドの成立要件を満たしているかの判断のみを行うこととなる。よって、今回のようなオフサイドポジションの誤認は起こり得ない。早ければ10月中に導入されるとの見込みであり、続報が待たれる。

80 LEVEL
@80Level
#FIFA revealed semi-automated offside technology will be used at the #WorldCup2022 to help officials make faster and more accurate offside decisions. It uses 12 tracking cameras underneath the roof of the stadium and up to 29 data points of each player:

80.lv/articles/fifa-…
2022/07/07 22:30
7Retweet 28Likes

 文:攻劇(@kogekidogso)      

***

ディ アハト第81回「映像自体に不備があった場合」のVAR介入ミスについて考える~セリエAのオフサイド誤審~、お楽しみいただけましたか?

記事の感想については、TwitterなどのSNSでシェアいただけると励みになります。今後ともコンテンツの充実に努めますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

また、ディ アハト公式Twitterでは、新着記事だけでなく次回予告や関連情報についてもつぶやいております。ぜひフォローくださいませ!

ディ アハト編集部

無料で「ディ アハト」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
【座談会】2023/24 プレミアリーグ・ベストイレブン企画
誰でも
統計データから分析する「スイーパー・キーパー」~Jリーグを例に~
誰でも
サポーターの歩き方~サッカー観戦紀行~#3
誰でも
サポーターの歩き方~サッカー観戦紀行~#2
誰でも
サポーターの歩き方~サッカー観戦紀行~#1
誰でも
イッツ・アバウト・タイム~サッカーにおける「時間」と「音楽」を考察する...
誰でも
選手分析:ジョーダン・ピックフォード【後編】〜国を背負うNo.1は、明...
誰でも
選手分析:ジョーダン・ピックフォード【前編】〜国を背負うNo.1は、明...