「映像自体に不備があった場合」のVAR介入ミスについて考える~セリエAのオフサイド誤審~
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第81回は、 VARのシステム面が要因となって起きた誤審を取り上げます。VARがいる試合で起こり得る問題を解消するために、必要なこととは?ぜひお楽しみください!
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9月12日に開催されたセリエAのユベントス対USサレルニターナで、物議を醸す判定が発生した。同点で迎えた後半アディショナルタイム、ユベントスに所属するFWのミリクがゴールネットを揺らしたが、VARが介入。結果、ボールに反応したボヌッチ(ユベントス)のオフサイドに修正されたというものである。
試合後、イタリアの放送局は独自映像を使用しながらこの判定を振り返った。すると、ボヌッチはオフサイドポジションにいなかったことが判明したのだ。というのも、中継映像やVARが用いた映像の画角外にサレルニターナの選手が存在しており、当該選手が本来のオフサイドラインの対象であった。
そこを基準にラインを生成すると、ボヌッチはオフサイドポジションではなかったのだ。
つまり、ピッチ上で下された「得点」という判断は正しく、VARが介入したことで誤った判断であるノーゴールに覆ったのだ。この判定は現地メディアを賑わし、ファンからも審判団への批判の声が大きく上がっている。
誤審が発生した原因は、間違いなくVARが使用した映像にある。VARが使用できる映像は基本的にテレビ中継と同じもののため、判定は中継制作陣のカメラマンがどう映すかによる部分に依存するという課題がある。
例えば、カメラマン側の技量不足などでとても見づらい映像となった場合、VARがその映像から判定の誤りを発見することは困難だろう。また、経験の多いカメラマンであっても、カメラの性能が低ければ映像のブレが強く発生し、視認性の劣る映像になる場合が考えられる。
そして今回の誤審は、VARが使用可能な映像にオフサイドライン対象の選手が映っていなかったために発生したことが分かっている。試合後、委員会は調査を実施。この点を発表するとともに、放送局が使用した広角の戦術用カメラはVARが使用不可だったと明らかにした。あらゆるカメラがゴール前にフォーカスしたためVARは誤認し、適切な判定が下せなかったのだ。
では、映像に不備があった以上、このミスを防ぐことは不可能だったのだろうか?
この問いについて、筆者は「不可能ではなく、防ぐことができるミス」だと考える。副審はオンサイドと判定しているため、ボヌッチよりもゴール側にいる守備側選手を把握していたと推測される。よって、副審がコミュニケーションシステムを通じて「CKが蹴られた側のタッチライン付近に1人残っていた」とVARや主審に伝えていれば、VARはチェックの段階で当該選手の存在を把握できただろう。
映像に映っていないため、正確な位置を把握したりオフサイドラインを生成したりはできないが、VARが介入する基準である「はっきりとした明白な間違い」を満たさず、判定修正には至らなかったと考えられる。
今回のようなミスは、VARを導入しているあらゆる大会で起こり得るだろう。レフェリー間での適切なコミュニケーションが求められる。
なお、今回の判定によるものではないとされているが、カタールW杯での導入が決まっている「半自動オフサイドテクノロジー」の早期導入にセリエAは動いているようだ。この技術は、機械が自動的にオフサイドポジションの選手を割り出し、審判員はオフサイドの成立要件を満たしているかの判断のみを行うこととなる。よって、今回のようなオフサイドポジションの誤認は起こり得ない。早ければ10月中に導入されるとの見込みであり、続報が待たれる。
80.lv/articles/fifa-…
文:攻劇(@kogekidogso)
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ディ アハト編集部
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