知っておきたいVAR!①VARのイロハ

2021シーズンよりJ1リーグでも本格導入が始まったVAR(ビデオアシスタントレフェリー)。そのVARについて攻劇(@kogekidogso)が紹介する「知っておきたいVAR!」シリーズ、第1弾のテーマはVARの基礎知識です。
ディ アハト編集部 2021.12.15
誰でも

こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第35回は、VAR(ビデオアシスタントレフェリー)特集記事第1弾として、「VARの基本」をテーマにお届けします。今やすっかりサッカーファンの間でもお馴染みの存在となったVAR。そんなVARの役割や制度について、今いちど本記事で確認していきます。

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 VAR本格導入初年度となった2021シーズンのJ1リーグは最終節を終え(もともと2020シーズンより本格導入の予定だったが、新型コロナウイルスの感染防止のための試合中断に伴い導入が見送られていた)、現在我々ファン・サポーターにとっては移籍情報やクラブの公式リリースに一喜一憂する日々が続く。

 今回はVAR特集の第1弾として、シーズン終了のこのタイミングで改めてVARがどのような制度なのかを紹介していこう。復習と来季への予習を兼ねて、ぜひ最後までご覧いただきたい。

Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)
@J_League
2021・2022シーズンのビデオアシスタントレフェリー導入試合について

2020シーズンの途中で導入を見送ったビデオアシスタントレフェリーを、2021シーズン及び2022シーズンに再導入することを決定しました。

#Jリーグ
詳細はこちら⏬
jleague.jp/news/article/1…
2020/11/17 17:42
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◇VARの原則

 まずはVARの原則から見ていこう。VARの制度には「最小の干渉で最大の利益」という哲学があり、VARが介入できるのは以下の4事象のみとなる。

  • 得点かどうか

  • PKかどうか

  • 1発退場(レッドカード)かどうか

  • 警告や退場(カード提示)の人間違い

これらの事象において、 “はっきりとした明白な間違い / 見逃された重大な事象” があった場合のみ、VARの介入が行われる。そしてビデオ映像を用いたレビューが行われた後、はっきりとした明白な間違いの場合のみ、主審の判断で判定が修正される。

 映像を用いたレビューは、VARオンリーレビューとOFR(オンフィールドレビュー)の2通りある。VARオンリーレビューは、VARが映像を確認し情報を主審に伝える形式で、客観的事実として確認できる事象(オフサイドか否かなど)の際に行われる。一方OFRは主審の主観的な判断が必要となる事象(ファウルの強度など)において行われ、主審自らピッチ脇のモニターでリプレイ映像を確認する。

 気を付けるべき点なのは、(ビデオ判定のイメージから勘違いされやすいが)VARは白黒つけるために存在するのではない。どちらとも取れる判定、グレーな事象ではVARは介入しないというのがルールである。あくまで最終決定権は、常にフィールドで試合を裁く主審にあるということだ。また、ビデオ映像によるレビューを行うか否かの判断も主審が下す(VARの権限は映像によるレビューの実施を主審に勧めることにとどまる)。

 なお、VAR導入初期に起こりやすい誤った運用例として、VARチェックで試合が止まる時間が長い場合に「VARが正解を探しにいってしまい時間を要している」ということがある。映像を見ているからこそ間違えられない、というプレッシャーを抱いたVARが誤った運用をしてしまう例といえよう。

いえぽん@只今就活中
@referee_iemoto
VARの原則
・全事象をチェック
・基本的に主審の判断を尊重
・次の2つ以外は介入しない
・はっきりとした明白な間違い
・見逃された重大な事象

具体的には
・得点か否か
・PKか否か
・退場か否か
・人違い

次のものには介入しない
・反則か否か(APPが明白な反則除く)
・警告か否か(二枚目含め)
2021/01/28 06:58
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 他競技のビデオ判定と大きく異なる点として、チャレンジ制ではないことが挙げられる。サッカーでは試合結果に関わる重大なミスジャッジはすべて修正されるという考え方のため、ビデオ判定回数に制限を設けないこのシステムが採用されている。そして試合中常に映像を見る審判員=VARを置くことで、ビデオ判定すべき事象が発生しても迅速に対応することができるのだ。

 少し余談になるが、JFAの競技規則において “はっきりとした明白な間違い” と翻訳されている文言は、英語の原文である国際サッカー評議会(IFAB)の競技規則上では現在 “Clear and Obvious error” と記される。しかしこの文言、実はVARが誕生した初期は “Clear error” だったのだ。ここでその違いを言語的に紐解いてみよう。

 clearは透明を意味するように、「説明な現象などが明快でわかりやすい」というニュアンスだ。一方でobviousは「火を見るよりも明らか、説明の必要がないほど誰が見てもわかる」というニュアンスである。

 以上のことから、VARが過剰に介入して試合が止まりすぎることのないように、そしてサッカーの面白さを維持できるように「審判員が明快に判断でき、火を見るよりも明らかな誤審」というより高い基準を設けるようになったのだと思われる。

◇VARの条件

 試合映像をモニタリングするVARルーム=VOR(ビデオ・オペレーション・ルーム)にはVAR、AVAR(アシスタント・ビデオアシスタントレフェリー)、RO(リプレイオペレーター)が入り映像をチェックする。そしてVAR制度の導入が難しい理由の1つとして人数不足が上げられているように、誰でもこの3つの役割を担えるわけではない。

 VARを担当できるのは国内トップリーグの現役主審もしくは元主審のみ。AVARは、VAR担当可能の審判員または同条件の副審が担当できる。そしてROに審判資格の有無は関係なく、機械に強い人が担当している。いずれの役割も所定の手順を踏みライセンスを取得する必要があるため、Jリーグ担当審判員の全員がVARやAVARも担当できるわけではないことも覚えていただきたい。

 通常はVARとAVAR1名ずつが割り当てられるが、大きな大会になるとAVARは2人になったり3人になったりする。人数が増えると同時並行でオフサイドやファウル等のチェックを行えるため、映像チェックが早く終わり試合の流れを止めにくいという大きなメリットがある。ROは基本的にカメラの台数によって人数が変わる。VARは1名のみの割り当てと決まっている。

 なお主審と副審の関係と同じく、VARとAVARでも報酬は異なる。2021年のJリーグではVARが6万円で副審と同額、AVARは3万円だった。なおルヴァンカップ初導入となった2019年はそれぞれ今の半額という、大変さに見合わない価格設定がされていた。

◇オフサイドディレイとは

 VAR導入における最大の変化は「オフサイドディレイ」の適用だろう。VAR有りの試合では、オフサイドではない攻撃が誤った判定で止められ得点やPK等の機会が失われないためにオフサイドディレイが適用される。プレーがゴールに向かっており際どいオフサイドだと副審が感じた場合には、その攻撃が終わるまでオフサイドのフラッグアップを遅らせることが推奨されている。

 プレーが続いたかと思いきや結局遡ってオフサイドになる未体験の判定方法に、VARに慣れるまで選手や審判員はやりづらさを感じるという。無駄走りをさせられたDFがストレスを抱いている様子はVAR有りの試合ならではの光景だ。一方副審に目を向けると、オフサイドディレイをしたもののプレーが続いていくうちに自分がオフサイドと判定したのか、オンサイドとしたのか分からなくなってしまうことがあるという。またオフサイドのフラッグアップをいつすべきか、というタイミング的な難しさもあるそうだ。

◇VAR豆知識

 最後にVAR有りの試合の観戦時に使える、豆知識を紹介する。

・日本ではオフサイドディレイ時に高確率で副審がフラッグを右手に持ち替える(通常ゴールライン方向へ動く時は左手で持つ)

・ファウルに関するレビューでズームの映像から引きの映像に変わった時、主審はすでにファウルを認定しカードの必要性を見る段階に移っていることが多い

・プレミアリーグではチェックの段階でVARが見ている映像が中継に流れる。PKチェックでファウルシーンが流れた後に映像がその前のプレーに戻った時には、PK判定は問題ないことを確認し終えていてその前に攻撃側の反則があったかどうかを確認している

 また、JFAの競技規則2021/22では140ページからの「ビデオアシスタントレフェリー(VAR)の手順」の章にVARの原則や進め方が細かく記載されているので、興味のある方はぜひそちらにも目を通していただきたい。

 VAR制度とそれに関連するルールは、複雑で覚えづらいものも少なくない。しかし、VARについて調べ理解が深まるほどに、試合の見え方や考え方も豊かになること間違いなしだ。それに加えてVAR含む審判団のジャッジの技術の高さにも一層驚かされる場面が増えるし、規則の理解が深まることで観戦中のジャッジに関するストレスも少なくなるだろう。

 ぜひ本記事を参考にしながら、選手のプレーだけでなくVARという要素も含め丸ごと試合観戦を楽しんでいただければ幸いである。

文:攻劇(@kogekidogso

編集協力:山中拓磨(@gern3137

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