マッチレビュー CL 21/22 準決勝 レアル・マドリード vs マンチェスター・シティ

リバプールが待つ決勝戦への進出を狙う2チームが挑んだ、シーズンの集大成となるゲーム。今回はリーガ優勝を決めたレアル・マドリードと、1stレグで乱打戦を制したマンチェスター・シティの対決を、結城康平(@yuukikouhei)が分析します。
ディ アハト編集部 2022.05.10
誰でも

こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第62回は、5月4日(水)にサンティアゴ・ベルナベウにて行われたチャンピオンズリーグ準決勝 2ndレグのマッチレビューをお届けします。ぜひお楽しみください!

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 欧州の覇を競うチャンピオンズリーグにおいて、名勝負が生まれやすいのは準決勝なのかもしれない。「1試合にすべてを懸けなければならない」だけでなく、「自分たちのホームではないスタジアムで開催される」決勝戦とは異なり、ホーム&アウェイ方式の準決勝はこれまでも「魔物」の存在を感じさせてきた。

 リバプールが奇跡の逆転劇でバルセロナを破った、3年前の準決勝をよく覚えている方もいるだろう。筋書きのないドラマこそがフットボールの醍醐味なのだ。

 そして、レアル・マドリードの本拠地であるサンティアゴ・ベルナベウは、その奇跡を静かに待っていた。

LFC Japan
@LFCJapan
3年前のこの日は…

😳 Liverpool 4-0 Barcelona 😳

#OnThisDay
2022/05/07 16:32
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 3年前のリバプールが諦めずに奇跡を起こしたように、トップレベルのチームが相応しい舞台で全力を尽くすことが最高のドラマを生み出す。ペップ・グアルディオラの集大成としてCL制覇を目指すマンチェスター・シティと、スペインリーグを制覇したカルロ・アンチェロッティ率いるレアル・マドリード。決勝トーナメントの常連となっている2つの強豪クラブは、慎重にスターティングメンバーを選抜したはずだ。

Match Day
@Match__Daay
Starting Line-Ups Real Madrid vs Manchester City 💥📸

#UCL #RMAMCI
2022/05/05 02:54
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 レアル・マドリードは好調のヴィニシウスを左サイドに先発させ、中盤にはカゼミーロ、クロース、モドリッチという定番の構成。フォーメーション図では、右ワイドにバルベルデを置いているのがアンチェロッティらしい隠し味だった。

 マンチェスター・シティは右サイドバックにイングランド代表のカイル・ウォーカーが復帰し、DFラインはレギュラーメンバー。中盤と前線にも万全のメンバーを揃え、レアル・マドリードに挑んだ。

◇アンチェロッティが用意した「2パターンの守備戦術」

 イタリア人指揮官らしい戦術の幅と、柔軟なマネジメント。カルロ・アンチェロッティは誰もが認める実力を、派手にチームで表現することは少ない。彼のシステムは遅効性の毒のように少しずつ、相手チームを苦しめていく。

 右ウイングに起用されたバルベルデが中盤ブロックを構成し、中盤の4人がダイヤモンドになるフォーメーションは、アンチェロッティが用意した「毒」の1つだ。このシステムは、ヴィニシウスを前線に残し、ウォーカーを牽制することが1つの目的である。

 ヴィニシウス相手でもドリブルで崩されることは少なく、その実力を発揮したウォーカー。それでも、ヴィニシウスを無視することはできない。特に印象的だったのは21分、オーバーラップしたウォーカーがカウンターのリスクを嫌うようにファーサイドに強いクロスを蹴った場面だ。ウォーカーはオーバーラップする場面であっても、ヴィニシウスからのカウンターには警戒していた。実際にヴィニシウスも、ウォーカーを抜けない局面であっても中途半端な高さでボールを受け起点になるようなプレーで、チームを助けていた。

 The Athleticによれば、彼の覚醒は「アンチェロッティですら予想外」だったようだが、 ブラジル人アタッカーの存在は右サイドからの攻撃を躊躇させていた。

① 4-4-2ダイヤモンドver.

 そして、タフなプレーでチームに貢献していたのが、フェデリコ・バルベルデだ。アンチェロッティにとって、ベテランが多いチームにおいて「走ることで貢献する」ウルグアイ人MFは不可欠。

 さらに、彼が中盤ダイヤモンドの左を守ることで、もう1つのメリットが生じる。それは、カンセロが「偽サイドバックとしてインサイドに入る動き」を防いでいることだ。

 実際に19分、カンセロが偽サイドバックのポジションに移動しようとして諦めた場面があった。モドリッチがロドリを監視し、デ・ブライネに対する守備の最強カードであるカゼミーロ。この位置関係で、レアルはシティの攻撃力を半減させようとしていた。

② 4-4-2ブロックver.

 もう1つのパターンが、シティが攻勢を仕掛けてきたときにヴィニシウスをブロックに参加させる4-4-2フラットだ。このフォーメーションではモドリッチが中盤のスペースに残り、カウンターの起点としての役割を担う。こちらをカウンターの策として用意しつつ、アンチェロッティはゲームを優位に進めようと考えていたのだろう。

◇マンチェスター・シティのビルドアップ改善「モドリッチのお株を奪った男」

 モドリッチは、広い稼働範囲と俊敏性で相手のプレッシングを回避し、花園で遊ぶ蝶のように華麗にピッチを支配していた。トップ下に起用されたそんなモドリッチのお株を奪うように、シティの中盤を活性化させたのがベルナルド・シルバだ。

 その圧倒的なボールコントロールから少年時代「風船ガム」の異名で知られた男は、今シーズンはロドリに近いポジションでゲームコントロールに参加する回数が増えている。レアルの中盤を翻弄したのは、この小柄なポルトガル人MFだった。

 

 モドリッチでロドリを抑えたいレアルだったが、ベルナルド・シルバのサポートによって「数的不利」の状況が続く。かといってカゼミーロが飛び出すと、中盤の底はクロースだけになってしまう。カゼミーロも、1列上がって相手を追いたいような素振りを見せた場面があったが、スペースを消す意識を優先していた。本来はバルベルデがサポートに向かいたいが、そうなれば今度はカンセロのスペースがフリーになってしまう。

 そして、デ・ブライネがクロース側から仕掛けてきたのは、レアルにとっては脅威だった。カゼミーロで抑えようというダイヤモンドとは違い、ブロックではデ・ブライネに対面するのはクロースになる。トップ下のポジションに顔を出すフォデンやジェズスを気にしながら、クロースをカバーするというのは、カゼミーロにとっても辛い仕事だった。

 19分、デ・ブライネの浮き球パスからベルナルド・シルバがシュートした場面。ここでもクロースの周辺となるスペースから攻め、チャンスを創出することに成功している。

 そして、ゲームをコントロールしてきたシティが先制点を決めることになる。ゲームの中心選手になったベルナルド・シルバがドリブルでボールを運ぶと、そこからジェズスを囮にしながらマフレズへ。レアルの中盤がプレッシングをミスしたこともあったが、ワンチャンスを決めたマフレズの度胸は流石だった。

 ニアサイドに抜群の強さを発揮するクルトワを欺き、フェイクを挟みながらそのニアサイドに決めたゴールは「ギリギリまで駆け引きを仕掛けられる」彼のメンタリティを示していた。

StatsBomb
@StatsBomb
GOAL: Riyad Mahrez, 73'

The first dangerous attack for either side since Vinícius Júnior's chance at the beginning of the half and Mahrez finishes clinically to give City a two-goal advantage on aggregate

StatsBomb Live xG: 0.09

#UCL | #RMAMCI
2022/05/05 05:34
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 難しい角度からのシュートで、ファーサイドを狙うには相手のDFを避けなければならない。マフレズのゴール期待値(xG)は、わずか「0.09」だった。そのシュートを決めたマフレズのスキルと勝負強さは、賞賛に値する。1stレグの勝利に加えて、レアルを突き放したこのゴールがゲームを決めたかに思われた。

◇「勝負を決めたもの」とは何だったのか?

ペップ・グアルディオラは、感情を抑えながら次のようにコメントした。

分析やビッグデータでは測定できない感情が、あの瞬間にはあった。これはフットボールだ。私も選手の経験がある人間として言うが、こういった偶然はフットボールでは避けられない。ロングボールを蹴ったエデルソンの判断がどうだったか?クルトワがギリギリでグリーリッシュのシュートをセーブしていなかったらどうなったのか?そういう小さな差こそが、トップレベルでは勝敗に直結する。人々は簡単に「格が足りなかった」というかもしれないが、そんな単純な話ではないんだ。
上記リンクよりコメントを翻訳

 レアル・マドリードにとっては奇跡であり、マンチェスター・シティにとっては悲劇。終盤に決まった2ゴールは、人智を超えたものだったのかもしれない。同点ゴールでシティが慌てたような雰囲気もなかったが、それでもレアル・マドリードは世界中に衝撃を与えた。

 答えを簡単に出せるものではないとは思うが、この試合で「勝負を決めたもの」について考えてみよう。クロスは両方ともグリーリッシュの付近から蹴られているが、その軌道は別々だ。ここで思い出されるのは、レアルが前半最初に作ったチャンスだ。その時はカルバハルがハーフスペースからクロスを狙い、それをベンゼマがヘディングシュートしていた。

 そのイメージを残したまま、2つのゴールを見返してみると「ハーフスペース周辺から、アーリークロスを狙われた」ことが明らかになってくる。

 このエリアからのクロスはリバプールも得意としているが、得点パターンとして有力だと考えられている(ファーサイドに届くまでの時間が短く、普通のアーリークロスよりも防ぎにくい)。

The Coaches' Voice
@CoachesVoice
@Wyscout Further support came from Madrid’s back line, as the home side created chances – and two goals – from crosses with a significantly increased presence inside the penalty area. Benzema’s penalty in extra-time then sealed an unlikely comeback... 🧐🧵
2022/05/05 23:45
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 それだけでなく、同点ゴールはフォデンとカンセロというクロス対応が苦手な選手が揃うエリアに供給され、そのボールをベンゼマが折り返している。レアルは前半からプレッシングに参加したフォデンが戻れないエリアを狙う場面が多く、このゾーンも徹底して狙われていた。ゴールを決めたのは両方ともロドリゴで、ゲームの終盤になるとカマヴィンガがDFラインの近くでサポートしながら、カルバハルを敵陣へと押し上げる回数が増えていた

 だからこそ、グリーリッシュに2度の決定機が生まれたのだが、それでもレアルはカルバハルのクロスボールという武器を最大限に活用しようとしていたはずだ。アシストだけではなく、途中交代したカマヴィンガはシティの攻撃を刈りながら運動量で中盤を制圧。中盤にダイナミズムが戻ったことで、レアルの攻撃陣は息を吹き返した。

StatsBomb
@StatsBomb
GOAL: Rodrygo, 90'

This makes it interesting...

StatsBomb Live xG: 0.09

Six minutes of added time. Real Madrid need one goal.

#UCL | #RMAMCI
2022/05/05 05:50
2Retweet 22Likes

StatsBomb
@StatsBomb
GOAL: Rodrygo, 91'

Read Madrid level the tie! Just 88 seconds between the two goals. 5-5 on aggregate

StatsBomb Live xG: 0.21

#UCL | #RMAMCI
2022/05/05 05:53
6Retweet 48Likes

 ゴール期待値はそれぞれ「0.09」、「0.21」という簡単ではないゴールを沈めたロドリゴのスキルも、当然ながらトップレベルだ。バウンドしていてコントロールが簡単ではない1点目はもちろん、2点目も密集地からヘディングシュートを決めている。

 リバプールの待つ決勝に、因縁のカルロ・アンチェロッティが運命に導かれるように勝ち進んだ。レアル・マドリードはベテランと若手の融合という難易度の高いミッションに挑みつつ、少しずつアンチェロッティがイメージする完成形に近づいている。ある意味では「移行期で未完成」のレアル・マドリードと「万全のチームに近づいている」リバプールの対戦だ。

 まだまだ盤石のレアル・マドリードではないが、それでも彼らは準決勝で勝利の女神に愛されていることを示した。迫るCL決勝戦は、どのようなゲームになるのだろうか。今から、欧州の頂点を決めるゲームが楽しみだ。

Real Madrid C.F.
@realmadrid
📸 #NuevaFotoDeCover 📸
2022/05/05 19:00
4107Retweet 60223Likes

文:結城康平(@yuukikouhei

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