マッチレビュー アジア最終予選 日本vsオマーン

初戦では敗戦している難敵オマーンとのアウェイゲームに挑んだ日本代表。オーストラリアとサウジアラビアを猛追するためには絶対に負けられないゲームとなったオマーン戦を、結城康平(@yuukikouhei)が分析しました。
ディ アハト編集部 2021.11.19
誰でも

こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第32回は、11月17日(水)に行われたW杯2022アジア最終予選 グループB第6節のマッチレビューをお届けします。ぜひお楽しみください!

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◇「成功体験の継続」という選択

 水際まで追い詰められていた日本代表は、W杯への出場を阻むライバルであるオーストラリアを直接対決で下したことによって、精神的にも楽になったはずだ。そこからの2連戦、波に乗ったチームの流れを崩さないことを重視した指揮官は「4-3-3」のベースを継続する。主力を大きく変えずにプレーしたのは、成功体験の継続と新しいフォーメーションへの適応を望んでのことだろう。

サッカーキング
@SoccerKingJP
🇯🇵発表🇯🇵
日本代表、オマーン戦に臨むスタメン発表! ベトナム戦から一枚変更、柴崎岳を起用
soccer-king.jp/news/japan/nat…

🗣️編集部より
「重要な11月のアウェイ2連戦。日本代表はピッチに送るサムライたちを発表し、南野や大迫らがスタメン入りしました」
日本代表、オマーン戦に臨むスタメン発表! ベトナム戦からは一枚変更 | サッカーキング  FIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選オマーン代表戦に臨む日本代表のスターティングメンバーが発表された。 www.soccer-king.jp
2021/11/17 00:07
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 しかし、実際のところはメカニズムの面で少しずつオーストラリア戦の好例からは遠ざかってしまっていたことにも言及する必要があるだろう。オーストラリア戦を復習してみると、チームのベースになっていたメカニズムは交互にサイドバックのスペースやDFラインにまで下がり、ビルドアップを助けていた2人のセントラルハーフだった。リヴァプールにおけるジェームズ・ミルナーやジョーダン・ヘンダーソンが得意とするような動きは、守田英正(CDサンタ・クララ)と田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)によってチームに加えられた特筆すべきアクセントだった。

 かつて川崎フロンターレで中核を担った2人のMFは独特の「フリーになり、スペースを使う感覚」を活用しながらDFラインからのボールを引き出し、それを循環していく。特に敵陣での仕掛けからのセンタリングで輝きを放つ長友を押し上げ、左サイドの位置をビルドアップでサポートするシステムは効果的だった。右サイドでは伊東純也(KRCヘンク)が縦への突破力で存在感を放ち、徐々に日本代表はゲームの主導権を握っていく。

 しかし、ベースが同じはずのベトナム戦では既にビルドアップの機能性が失われていた。1つの課題として挙げられるのは、戦力に劣るベトナムを自陣にまで押し下げることを目指し、田中が高いポジションに残る時間が長かったことだ。結果的にDFラインへのサポートは守田への負荷が高まり、距離感も崩れていく。守田はボールコントロールの技術には優れるが、自陣でボールを触ればそれを黄金に変えられるアンドレア・ピルロやポール・スコールズではない。前進を一手に担った守田のところからは効果的なパスを出せず、少しずつチームは不調に陥っていく。それでも、躍動したのが伊東だった。サイドで獅子奮迅の働きを見せ続け、過密日程でも黙って結果を出すアタッカーは、ベトナムの組織を恵まれたスピードで破壊。オフサイド判定もあったが、チームの軸として辛勝を支えた。

Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)
@J_League
伊東のゴールで日本が先制!!

✔️ ゴール!!
🏆 AFCアジア予選 –Road to Qatar –
🆚 ベトナム🇻🇳 vs 日本🇯🇵
🔢 0-1
⚽️ 伊東 純也 (日本)

「AFCアジア予選 -Road to Qatar - 」はDAZNで配信!
prf.hn/click/camref:1…

#この戦いにすべてを懸けろ
#Jリーグ
#daihyo
2021/11/11 21:20
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◇攻守に精彩を欠いた前半45分

 そして、やってきたオマーンとのアウェイゲーム。日本代表が最低でも3位を目指していくことを考えれば、ホームで敗北したオマーンは倒さなければならないライバルだった。しかし、その重要なゲームは低調な立ち上がりとなってしまう。

 オマーンはオーストラリア、サウジアラビアの2チームと比べれば個人能力で劣るが、それでも明らかにベトナムや中国とは別格。アフリカのチームをイメージさせるような独特のリズムでボールを動かし、中盤は力強いターンとテクニックでボールを失わない。その個人技を織り交ぜたパスワークに幻惑され、日本代表は中盤でポールを奪えない場面が目立った。

 プレス耐性に優れるオマーンが特に得意としていたのが、後ろや斜めから二度追いしてくるようなプレッシングを体でブロックしながら妨害しキープするようなプレーだ。このプレーによって、少し遅れながら挟むような日本のプレッシングは無効化される。ベトナムであればそれでもミスを誘えていたが、オマーンは甘いプレッシングを逆に利用するように攻撃を仕掛けていた。

 オマーンが狙ったのは日本の攻撃において中心となっていた左サイドだった。南野が中に入ったところで奪ったタイミングでは、長友を誘って裏のスペースを使おうとしていく。そのような場面ではビルドアップで左側に流れていた田中もサポート人員となっていたが、スタート位置が低めなのでプレッシャーは遅れてしまう。

 20分20秒〜の場面は、最悪の状況だった。田中が慌ててプレッシングに走るが外され、長友が釣り出される。その前に生じたスペースでフリーになった選手にボールを受けられ、遠藤航の周囲に2枚のアタッカーが待つ。フランスの守備職人エンゴロ・カンテのように無理矢理に数的優位を覆す遠藤がオマーンの攻撃を完璧にシャットアウトしたから助かったようなものの、慎重に入ったチームとは思えないような崩され方だった。守備の局面ではオーストラリア戦で最大の武器だったハイプレスが機能不全で、疲労で身体が重い選手たちではオマーンのDFラインに十分な圧力を与えられない。

 ここで微妙だったのが南野の守備位置で、チームとしてリトリート局面の決め事が不明瞭なように見えた。彼がサイドハーフの位置まで下がって田中と遠藤が中になる4-4ブロックになることもあれば、南野が前に残ることもあったからだ。このルールが曖昧で、問題となった中盤が南野に連動していないことで「南野が前に残っているのに、スライドが甘くオマーン代表の右サイドバックがドフリー」という状況になりやすかった。結果的にそうなると、前述した長友の前を狙われることになってしまう。ここ数試合、メディアから長友のパフォーマンスは疑問視されているが、この試合は構造的に長友のところに過負荷になったことにも言及しないとフェアではないだろう。

 ビルドアップについては、柴崎が司令塔としてのポジションではなく「攻撃的なセントラルハーフ」としてプレー。左サイドバックとセントラルハーフの中間となるポジションに下がった田中が、ゲームのコントロールを任せられる。しかし、守田と全く同じで田中もあくまで「バリエーションの多い動きと組織的な連動によって相手を惑わし、結果的にテクニックを最大化する」選手だ。組織の中でプレーすることで相手の読みを外す川崎フロンターレの選手に、これまでと同じように属人的なビルドアップを託したことはベトナム戦、オマーン戦と続いた失敗だった。ペドリにブスケツをやらせようとするようなもので、明らかに選手の使い方を誤った感は否めない。

 多かったパターンは柴崎と南野がセントラルハーフに監視されていることでパスコースが無く、少し遅れてオーバーラップした長友に展開だ。しかしブロックの外でボールを回すだけでは、中央を抑えたオマーンの4-3-1-2の術中だった。2トップのところでファーストプレスを外すようにボールを動かしたいところだが、センターバックも2トップがいるのでボールを運びづらい。

 唯一、柴崎がファーサイドの選手を中に寄せることで逆サイドのマークを手薄にし、ファーサイドにクロスを狙うようなプレーは成功しそうな予感を感じさせた。右サイドでは山根が中距離の配球でブロックの外から仕掛けるが、突破力のある伊東を孤立させられない。柴崎が近いポジションでプレーすることでマークを一緒に連れてきてしまい、オマーンの守備陣が結果的に密になってしまっていたのだ。本来は柴崎が下がりながら伊東の周囲にスペースを作るようなプレーも増やしたかったが、ほとんどそういった狙いのあるプレーは見られなかった。

◇救世主となった三笘

  川崎フロンターレで絶対的な存在となり、ベルギーリーグでもキレ味鋭い突破で存在感を高める男。三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ)というカードを後半から切った選択は、森保監督を救う英断だった。「ボールを数メートル前に運ぶ」という視点では日本代表屈指の推進力を誇る三笘を後半から投入したことで、一気にゲームの構造は改善される。

 彼が自分が加速するスペースを使うことを優先し、低いスペースでボールを受ける動きを増やしていく。それによって、田中がハーフスペースの高いポジションでプレーしやすくなったのだ。  また、オマーンの4-3-1-2ではサイドのカバーが少なく、対面したDFもボールを奪う積極的なプレーが難しい。守備では判断に迷うプレーが多かったオマーンの左サイドバックを、キックフェイントや切り返しを得意とする三笘が蹂躙していく。

 結果的に川崎フロンターレでのプレーを思い出したのか定かではないが、田中のパフォーマンスが復調したことは興味深い。彼はブロックの外でボールを動かすだけでなく、三笘が入ってからは中央寄りでプレー。DFラインの前でファーストプレスを回避し、遠藤と縦関係を作りながらパス交換して相手の中盤がバランスを崩すタイミングを見極め、縦の南野や大迫に配球していくようなプレーが増えていった。

 三笘という選手がドリブラーとして傑出している点は、実はドリブルそのものではない。彼の強みは、前向きに仕掛けられる位置とボディアングルでボールを受け、そこから前に運ぶファーストタッチが恐ろしく正確であることだ。ドリブルで何回もボールに触るまでもなく、彼はDFを剥がしてしまう。得点シーンも、彼のそのような強みが凝縮されたプレーだった。

 途中交代したセルティックの古橋も存在感を示し、「ニアサイド側センターバックの死角に立つ」ことを徹底することで相手を嫌がらせていた。グラウンダーのクロスが流れてくれば、彼は必ずゴールを決めるだろう。その綿密な準備のスキルが、間違いなくセルティックでの活躍を支えている。

サッカー日本代表
@jfa_samuraiblue
⚽️試合終了⚽️

🏆アジア最終予選(#RoadtoQatar)
🇯🇵#SAMURAIBLUE 1-0 オマーン代表🇴🇲

🕐25:00KO<日本時間>
📱DAZNでライブ配信中
🔗jfa.jp/samuraiblue/wo…

#jfa #daihyo
#新しい景色を2022
#サッカー日本代表
2021/11/17 02:50
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 難敵オマーンを相手に、アウェイでの勝利。過酷な日程やコンディション面を考えれば、褒める声があることも当然だろう。しかし、ゲーム全体の方針という視点では不明瞭な状況が続いている。守備・攻撃の両方が曖昧に45分を過ごしてしまっており、初見のように探りながらプレーしているのは奇妙だった。初戦で相手の特徴や配置は掴んでおり、そこから大きくは変わっていない。チームとしての指針を定め、もう少し序盤から狙いを明確にしてプレーすべきだったはずだ。狙った結果の失敗であれば仕方がないが、「狙うポイントを見定める」ように個々がプレーしているのは悩ましい。南野が右サイドを抜けたとき、長友が攻撃をすべきかカウンター対応すべきかを迷って止まってしまったシーンがあったが、あの中途半端さが「準備不足」を象徴していたように思える。日本代表の底力は、まだまだ見えていない。W杯出場も近づいた今、更なる進化に期待したい。

文:結城康平(@yuukikouhei

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