そうだ、ニュージーランド行こう!~高橋秀人選手の活躍を追って~【footysab氏インタビュー】
こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第90回では、 以前インタビュー記事に登場いただいた「サブさん」ことfootysab(@footysab)氏のニュージーランド滞在記を掘り下げます!オークランド・ユナイテッドFCでプレーする高橋秀人選手の活躍を中心に、ニュージーランドサッカーのあれこれを結城康平 (@yuukikouhei)がインタビュー。ぜひお楽しみください!
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また本記事公開にあたり、高橋秀人選手(@hanryustar)ご本人よりメッセージをいただきました。ありがとうございます!
「ニュージーランドに渡ってから環境に適応することに必死で、なかなか自分の活動をファンの方に届ける機会を作れませんでした。
そんななか以前から親交のある結城さんと、僕の活動をTwitterで丁寧に紹介してくれたサッカーファンのサブさんがニュージーランドサッカーについて対談をしました。
ぜひみなさんにこの記事を見ていただきたく思います。」
◇いざ、ニュージーランドへ!
結城康平(以下、結城):以前サブさんがX(旧Twitter)で発信されていた、ニュージーランド訪問に関する一連のスレッドを大変興味深く読ませていただきました。本日は、その様子について詳しく伺っていきたいと思います。
3日間にわたり練習や試合、指導の現場を見学し大変お世話になりました。是非発信してくださいとのお言葉を賜りましたので、長くなりますが一部始終をまとめます。
#磐田サポNZ遠征
結城:以前ディ アハトでインタビューさせていただいたように、サブさんはこれまで30か国以上を訪れその土地のサッカーを見てこられました。まずは、今回ニュージーランドに行くことを決めた背景や理由からお聞かせいただけますか?
footysab(以下、サブ):私自身、コロナ禍で3年近く海外に行けていませんでした。そんな中、ようやく2023年に入ってそろそろ行けそうだというところで、行き先の候補の1つにニュージーランドがあったんです。
ニュージーランドといえば、高橋秀人選手が2022シーズンで横浜FCを退団後に新天地として選んだオークランド・ユナイテッドFCがあるということで。どのみち試合は観に行こうと決めていたのですが、ご本人が「現地に来られる方、お声掛けください」と発信をされており、せっかくなのでと一応ご本人にDMでご連絡を差し上げてみたんです。
それが2023年6月末くらいで、そうしたら7月の頭に高橋選手からお返事をいただけました。「試合も普通に街のサッカー場でやってるような感じなんで気軽に来てください」とおっしゃっていただき、「こっちは寒くてスコールも頻繁にあるので、雨具とか濡れてもいい服装があると良いですよ」と細やかにお気遣いまでしていただいて。それから7月の20日頃にニュージーランドに向かいました。
結城:結構弾丸な日程だったんですね!ニュージーランドに実際に行ってみて、印象はどうでしたか?
サブ:ニュージーランドは色々な民族が暮らしていて、歴史的にも欧州などと比べるとはるかに新しい国です。多様な人がいるので、お互いの背景を尊重しているところをすごく感じました。たとえば、公用語は英語に加えて先住民族マオリの言語(マオリ語)を採用しています。
あとは、街中に自然保護区など自然のエリアが多いですね。ニュージーランド最大の都市であるオークランドでも、結構あちこちにあります。それで、その中に人々がスポーツを楽しめるような広大なグランドがあったり。新しくできた国なので、街もしっかり都市計画に基づいて作られたような印象ですね。一方で、島は起伏に富んでいるのですがそこはそのまま家とかが建てられていたりもします。
併せてなでしこジャパンのW杯2試合目を観にダニーデンという街を訪れて、博物館を見てきたんですが、大体150年ぐらい前にイギリス人やスコットランド人が入植して街を作ったみたいな感じでした。
結城:ニュージーランドというと、ラグビーがかなり有名な印象です。そういったところでのサッカーの立ち位置とか、文化ってどうでしたか?
サブ:ニュージーランドでも、サッカーは人々の生活に根付いているんじゃないかと感じましたね。オークランドにも結構チームがたくさんあって、それぞれにやっぱりユースチームもありますし。小学生とか中学生のジュニアレベルのチームからあって、オークランド・ユナイテッドも確か3チームくらいあって、それぞれトップ・2部・3部リーグみたいな感じで活動しているようです。
もちろんラグビーは人気ですが、フィジカル面の素質や条件などからサッカーは比較的とっつきやすそうな感じがしますね。元々イギリスから入植した人々が作った国ではあるので、市民権を得ているスポーツなんだなと。
結城:クリス・ウッド(ノッティンガム・フォレスト)のようにプレミアリーグでプレーするニュージーランド選手もいますしね。人気スポーツであることは変わらないんですね。
サブ:あと、高橋選手の言葉で印象に残っているのが、ユース世代やジュニア世代はクラブのチームでやれるしレベルも高いんですけど、大人になったときに国内にサッカーで稼げるすべがない。これがやっぱり一番大きなハードルのようです。
結城:トップレベルで大人がやろうとすると、やっぱりオーストラリアのAリーグ(Aリーグ・メン/ウィメン)が行き先としては一番可能性が高いイメージでしょうか。
サブ:そうですね。あとはAリーグ・メンに越境参加しているニュージーランドのウェリントン・フェニックスというチームもあります。そこに入るか、留学してもうプレミアの下部組織とかに行っちゃうかって話ですよね。
結城:確かにスコットランドとかイングランドの下部リーグ、ニュージーランド国籍の選手もちょいちょいいますよね。
サブ:そうそう。あとは逆もしかりというか、スコットランド生まれスコットランド育ちだけどニュージーランドにルーツがある関係で、東京オリンピックのU-23ニュージーランド代表に入ったディフェンダーもいましたね(ジョージ・スタンガー)。
結城:言語面でも、先ほどの話にあった国の歴史や文化の部分でも、比較的イングランドやスコットランドへは行きやすいっていうのはあるんでしょうね。とはいえ国内となると、選手は仕事しながらアマチュアという形になってしまうんですね。
サブ:ラグビーはスーパーラグビー(ニュージーランド・オーストラリア・フィジーのプロチームが参加する競技会)もありますから、運動できる子は将来を考えてそっちへ……みたいなことはあるようです。
あとニュージーランドでは、意外とバスケも盛んみたいです。バスケのワールドカップにも出ていましたしね。色々なスポーツがあるけど、やっぱりちゃんと食べていけるとなるとラグビー、っていう感じになってしまうようです。
◇オークランド・ユナイテッドの試合の様子は?
結城:一連のポストの中で、オークランド・ユナイテッドの練習場の写真を投稿されていたじゃないですか。練習場とか施設とか、環境面はどうでしたか。
サブ:高橋選手のいるオークランド・ユナイテッドは、環境としては日本人ファンにはクラブワールドカップでおなじみのオークランド・シティに続くくらいの設備レベルじゃないでしょうか。ただ、自分が行った時はたまたまニュージーランド女子代表に設備を貸し出しちゃっていたのですが(笑)。
普段は公式戦も行われるちゃんとしたピッチもあるのですが、NZ女子代表🇳🇿の練習場となっており使用できず。
その辺の広場みたいなところで高橋選手も練習に参加します。
結城:トレーニング見学は金曜夜に行かれたということですが、やはりアマチュアだと平日はみんな仕事して夜の練習が基本ってことですよね。それから週末に試合というスケジュールですかね。
サブ:そうですね、ほぼ土曜日に試合があるので、金曜日の夜トレーニングして準備という感じでしょうね。ニュージーランドでは基本的には北部・南部・中部でリーグが分かれています。オークランド・ユナイテッドの所属するノーザンリーグは、オークランド圏内か、車で2時間もかからない近隣エリアにチームがまとまっているので、それほど移動の負担はかからないと思います。
ただ現在オークランド・ユナイテッドは上位に入っており、そうなると国全体の最終プレーオフのような大会があるので、もしかしたら南のエリアに遠征に行くことになるかもしれないですね。
結城:サブさんから見て、高橋選手のプレーはどうでしたか?
サブ:やっぱりこれまでの経験もありますし、チームの中でもボールを落ち着けられる選手ですよね。チームの選手は、基本ボール持ったらみんな前に前に、という感じがあるので。YouTubeに動画とかも上がっているのですが、結構ボールが飛び交う感じです。
サブ:リーグ自体、全体的に前に蹴っていくみたいな感じはあるのかなと。オークランド・シティなんかは監督がスペイン人なので、つないで崩す意識とかはあるかもしれないですが。今回私が観た試合は町クラブ相手だったので、まさに“前に前に”みたいな感じで。
シーズンが始まって既に4ヶ月が経過し15試合以上戦っているので、全く違和感なく英語でチームメイトに指示を出します。主審に判定の基準を問うなど積極的なコミュニケーション。
結城:結構フィジカルバトルとかも激しいんですか?
サブ:やっぱり当たりは強いですよね。観ていてもドスドス音が聞こえますね。そんな中フィジカル面でも、高橋選手は流石というか、全然問題なしという感じでした。
結城:なるほど。話がそれてしまいますが、このパンの写真めちゃめちゃ良いですよね(笑)。
サブ:(笑)
サブ:ホームはオークランド・ユナイテッドなのに相手チーム側の販売だったんですが、「君どこから来て誰を応援しているんだ」って話しかけられて「ごめん、相手チームの高橋選手なんだ」みたいな話をして。そういえば相手チームにも日本人選手がいましたね。結構多いみたいですね、ニュージーランドでプレーする日本人選手。
結城:サポーターはどうでしたか?たくさん来ていましたか?
サブ:知り合いなのか家族なのかまではわからないですけど、それっぽい人たちはそこそこ来てましたね。ただ場所が本当に公園の柵で囲ったサッカー場みたいなところだったので、そこまでたくさんというわけには。
結城:一番盛り上がるのは、やっぱりオークランド・シティとの試合ですか。
サブ:そうですね。とはいえ今季は2試合とも負けちゃっているんです。
結城:プレミアリーグ同様に今はシティ側が優勢な状況なんですね。なでしこのW杯の試合も観戦に行かれたんですよね。
サブ:そうですね。オークランドから車で行ける距離のハミルトンという街での試合でしたが、お客さんは結構入っていましたね。オークランド在住の日本人の方が押し寄せていた感じで、自分はその時着物を着ていたんですが、「良いですね」と呼び止めてくれた方が何人かいらっしゃいました。試合後には会場で、高橋選手や岩田卓也選手(オークランド・シティFC)にも会うことができました。
◇高橋秀人選手の“指導者としての顔”に迫る
結城:次は、指導者としての高橋コーチについてお聞きしたいなと思います。
サブ:穏やかというか、子供たちとコミュニケーションをしっかり取りながらコーチングされている印象でした。リーグが開幕してからまだ4ヶ月とかで、ニュージーランドに移られてきて半年も経っていないと思うのですが、指導も外から見ていて違和感なくされていました。ただ、練習の最初と最後のチームメンバーを集めての挨拶なんかはまだ緊張されるとのことでした。
高橋コーチはオークランドユナイテッドU13のBチームを率いています。主に日曜日がリーグ戦で、この日はリーグ2位クラブとの首位攻防戦でした。
サブ:子供たちの試合が終わった後も、親御さんか関係者か、声をかけられていたのでもう信頼も勝ち取っているんだなと。やっぱり親としては、信頼できない人に自分の子供を預けたくはないと思いますから。
もちろん元代表選手という経歴などもあるでしょうが、結局のところ高橋選手ご自身がこれまで積み重ねてきたコミュニケーションのところで築き上げた信頼があるからこそなのかなと。
強権な態度で指示を飛ばす方がチームを束ねるには手っ取り早いですが、それでは選手の成長に繋がりません。
と、口で言うのは簡単ですが、英語でやるのはとても難しいはずです。
結城:高橋選手の指導されているチームはどんなサッカーをしていましたか?
サブ:そうですね……しっかりボールをつなげようとしていたと思います。ボールを持ったら自分でひたすら持ち上がるのではなく、周りに気の利いた動き出しをする選手がいて、そこに対してパスを出すようなことをやっていたかなと。
結城:抽象的な言い方ですけど、丁寧なサッカーをしそうなイメージがあります。
サブ:上手い子がここだというシーンでボールを持てているのって、その子だけじゃなくて過程も含めてまんべんなくチームにそういった指導がいきわたっているからこその結果だと思うので。メンバーがある程度入れ替わりつつも、チームでやることは整理されているのかなと、素人目には見えましたね。
様々な調整を経て、全ての選手にプレータイムを与えつつ、結果も求められる。決して簡単な仕事ではありません。
結城:なるほど。ユースの選手たちについて、高橋選手もポテンシャルをすごく感じているとのことでしたが、サブさんから見てどうでした?
サブ:多民族国家だという話をしましたが、ニュージーランドの選手たちはジュニアやユースの段階で、普段から本当に色々なタイプ・特徴の選手を相手にしていると思うんですよ。だからそういった対応力は培われているのかなと感じますね。あとU-13の試合には女の子の選手も出ていたんですが、男子に交じって全然遜色なくやれていたので驚きましたね。
◇オセアニアサッカーはポテンシャルの塊
結城:これまで色々伺ってきましたが、最後に読者の皆さん、特にニュージーランドのサッカーに興味を持った人に向けてメッセージをいただけますか。
サブ:日本のサッカーファンの方の中では、他の地域と比べてオセアニアってまだそこまで注目されづらいところがあると思いますが、そのポテンシャルはまだまだあるんだなと感じました。高橋選手がおっしゃるように才能が豊かな選手たちが多く、彼らがこの先うまくステップアップできれば、可能性は広がっていくと思うんですよね。
ニュージーランドはもちろん、他のオセアニア諸国の選手もニュージーランドのリーグで活躍して、より上のレベルに進んでいくことができるんじゃないでしょうか。
ブライアン・カルタックという、オークランド・シティ経由でオーストラリアのAリーグのセントラルコースト・マリナーズFCでレギュラー勝ち取って、リーグ優勝まで果たしたバヌアツ人のセンターバックがいるんですよ。彼はオークランド・シティに行く前もニュージーランドのアマチュアチームやソロモン諸島、パプアニューギニアなどのチームでプレーしていましたね。それで最終的に29歳でAリーグデビューをし、レギュラーとして優勝しています。
ラグビーが人気と思われがちかもしれませんが、オセアニアのサッカーにはポテンシャルがあるし人気もすごい。オセアニアサッカーというとオークランド・シティなどクラブワールドカップに出てくるクラブくらいしか知らないっていう人も多いかもしれませんが、実際はその向こう側がもっと広がっています。その中でも一番我々に近いところの一つが、高橋選手のいるオークランド・ユナイテッドだと思うんですよね。
実際、日本にとっても侮れない存在ですよね。東京オリンピックの時だって、U-23代表があれだけ追い詰められましたし。
結城:そうですね。ニュージーランド代表、めちゃくちゃ強かったですよね。
サブ:高橋選手はそこがきっかけだってお話もしていましたね。やっぱりオセアニアって我々日本人からすると南米からもヨーロッパからもアジアからも遠いイメージで、まったく身近には感じないかもしれません。けれどそういったところにも、まだ見ぬ才能があったり。そもそも才能とかそういった見方じゃなくても、みんながサッカーを楽しんでいる。そういったところを、僕は強調したいです。
結城:僕の見方は少し違う角度かもしれないですが、今、世界のサッカーってどんどん均一化していると言われていて。結局均一化が進んでいくと、均一化していないやり方のチーム・選手が求められるようになる、逆の現象が起きてくるみたいな話が色々なところで起こっていて。ヨーロッパサッカー界なんかはアフリカにそれを期待していたけれど、気づけばアフリカもヨーロッパ化してきていると。
そうなると、ニュージーランドだったり他のオセアニア諸国だったり、これまでそれほど大きく注目される機会がなかった地域から「均一化を打破する新たな何か」が出てくるんじゃないかと、ちょっと期待しちゃいますね。
サブ:確かにそうですよね。サッカーっていつどこからすごい才能が出てくるかわからないですし、国ごと地域ごとでまたそれぞれ違うので、どの国からも学ぶべきことが出てくるっていうのはサッカーの面白いところだなと実感しましたね。
結城:今後も、ニュージーランドサッカーとオークランド・ユナイテッドの高橋選手に注目していきたいと思います。本日はありがとうございました。
聞き手:結城康平 (@yuukikouhei)
編集:ディ アハト編集部(@die_Acht)
ディ アハト第90回「そうだ、ニュージーランド行こう!~高橋秀人選手の活躍を追って~【footysab氏インタビュー】」、お楽しみいただけましたか?
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