座談会「エバトニアンの知らない世界」〜天国と地獄〜後半戦

ウエストハム・WBA・リーズの歴戦ファンが集合!21-22シーズンの降格危機をなんとか脱したエバートンサポーターと共に、これまで経験した「フットボールの天国と地獄」についてたっぷりと語ります。
ディ アハト編集部 2022.06.21
誰でも

こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第74回は、 イングランドフットボールの酸いも甘いも経験したサポーターたちの座談会企画の様子をお届けします。後半戦となる本記事では、応援を続けるモチベーションと各クラブの今後というテーマで語り尽くします。ぜひお楽しみください!

また、購読登録いただきますとディ アハトの新着記事を毎回メールにてお送りいたします。ご登録は無料で、ディ アハト編集部以外からのメールが届くことはございません。新着記事や限定コンテンツを見逃さないよう、ぜひ下記ボタンよりご登録いただけると幸いです。

***

◇はじめに

 21-22シーズンも終わりを迎えた、イングリッシュ・プレミアリーグ。筆者である私・BF(@bf_goodison)の愛するエバートンFCは、ホームのグディソン・パークで大逆転の末、劇的な残留を果たしました。そこで、降格を味わい昇格の喜びを知り、よりエキサイトした経験をお持ちのベテランフットボールファンの方々にお声がけさせていただき、座談会を行いました。

 本記事は、Twitterのスペースを利用して実施した座談会の内容を、永久保存版として形にしたものとなります。座談会の前半については、以下リンクの記事よりご覧いただけます!

 明日は我が身とはよく言ったもの。降格という2文字とは縁がないサポーターの皆様、既に辛い経験をお持ちの方々、とにかくプレミアリーグに魅せられた人々……あらゆるサッカーファンにお届けしたい特集です。

 なお、Twitterスペースは21-22シーズン残留争いの真っ只中、2022年4月29日に催したものです。

BF
@bf_goodison
【告知】

GW特別企画🎉
「エバトニアンの知らない世界」
"天国と地獄"

4/29(金)21:00〜予定

スペースにて

スペシャルゲスト
@BOINGxxBAGGIES
@giovannikatoman
@eastendertokyo
百戦錬磨の先輩方が私たちの知らない世界を教えてくれる?
歓喜と絶望を知る方々です。

是非!
2022/04/15 22:40
15Retweet 67Likes

BF
@bf_goodison
いよいよ…⏳

今夜21:00から!
Twitterスペースにて
「エバトニアンの知らない世界」
〜天国と地獄〜

ゲストスピーカー🔈🎵
サスーンさん@BOINGxxBAGGIES
じおさん@giovannikatoman
東京さん@eastendertokyo

ホスト&司会🎙
BF @bf_goodison

⏺録音あり

#エバトニアン放送部
2022/04/29 16:58
5Retweet 21Likes

 笑いあり、悲鳴あり、あらゆるエピソードを提供してくれた3名のゲストスピーカー様をご紹介します。それでは、イングランドフットボールの知る人ぞ知る「天国と地獄」、後編もどうぞお楽しみあれ!

◇ゲスト紹介(敬称略)

・West ham Tokyo(以下 東京 / WHU)

1999年に訪れたアップトン・パークでの観戦を機に、ウェストハム・ユナイテッド一筋で応援する生粋のハンマーズファン。耳の痛いクリティカルな見解と、スペースでは愛するペット、小鳥ちゃんの声が聞こえてくることでお馴染み。

Twitter:@eastendertokyo

・Sassoon(以下 サスーン / WBA)

大脱走!ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンを通じてチャンピオンシップの沼にハマった1人。プレミアリーグのほかにJリーグも観戦、今回は「9EFLとはなんぞや?」を語ってくださいます。独特な視点と愉快なジョークは切れ味抜群!

Twitter:@BOINGxxBAGGIES

・じお(以下 じお / LUFC)

一世を風靡したリーズ・ユナイテッドFCの黄金期を知るお方。ゲストの中では最も辛い地獄を経験?苦節15年以上の時代を乗り越えたからこそ冷静沈着な闘志が伝わります。フットボールの酸いも甘いも知り尽くした言葉には重みあり。

Twitter:@giovannikatoman

また、ディ アハト編集部メンバーでエバートンFCファンの私BF(以下 BF / EFC)が、座談会のファシリテーターを務めさせていただきます。

◇ファンとしてのモチベーション

〜降格、昇格で学んだこと〜

BF / EFC:前半パートでは、それぞれのクラブの軌跡、天国と地獄、そしてあるあるネタについてお話いただきました。後半パートでは、まずはモチベーションをテーマに、皆さんが地獄と言える経験をしてきた中でファンとしての心境の変化や、昇格・降格・残留争いで学んだことなどをお聞きできたらと思います。まずは、ウエストハムを追う東京さんからお願いします!

東京 / WHU:(座談会前半で、)アップトン・パークへ行ったとお話ししましたが、僕はテレビから入ったのではなく、現地観戦での経験がクラブを好きになったきっかけです。

勝とうが負けようがあまり関係なく、スタジアムまで電車で向かって、駅を降りて街を歩いて、カレーだとか食べ物のいろんな匂いを感じて、試合を観て、帰りに地元の人たちとパブで酔っ払って……そこまでが私のフットボールです。

もちろん、チームが頑張っていれば最高です。ただ、さすがに降格した時や残留バトルに巻き込まれた時はガッカリしますよ。

どちらかというと、勝ち負けよりもどうすれば来季昇格できるかとか、マネジメントのことを私は考えていますね。ボロボロになってクラブが落ちた時に、「新体制でリセットしてユース・プロダクトメインで立て直しだ」と考えたことがありましたが、それはダメですよね。これだけ経済戦争になってしまったら、その戦略だと戻ってこれない。シェフィールド・ウェンズデーやサンダーランド、マンチェスター・シティもそんな時期がありました。

彷徨って浮上できればいいですが、本当に大変です。ボルトン・ワンダラーズやダービー・カウンティのように破産、クラブ消滅、ということもあります。ホワイトナイト(企業の救済者)で外資系の人がきても、とんでもない経営をしたりいつ離れてしまってもおかしくない。ロシア系のスポンサーがつく方々もそうですよね。こればかりは運ですけどね。

加えて、昇格・降格で学んだことですが、ウェストハムはこの座談会メンバーの4クラブにおいて残留バトルに勝ち残った回数が1番多いチームだと思うんですよ。だから、落ちた回数も比較的少ない。

これまで見てきた視点で言うと、「勝ち点を何点まで到達させられるか」よりも、「相手より幾つポイントを落としてもいいか」と考えた方が面白いです。「残り5試合くらいになると、相手より何回負けてもいいか」という逆張りの発想です。

BF / EFC:なるほど、少し気が楽になるかもしれませんね。東京さん、ありがとうございました。続いてはウェストブロムについて、サスーンさんにお伺いします。

サスーン / WBA:チャンピオンシップ沼の住人から言うのもあれなんですが、iFollowなど視聴方法のお話もあったように、降格するとマイナスの要素が多いのでクラブをサポートする人が減っちゃうかと思うんです。今まで、Twitterのタイムラインで見てきた人が浮上しなくなる、アカウントが動かなくなる、もしかしたら最悪アイコンが別のチームに変わる……なんてこともあるかと思います。

でも、その方々にネガティブな言葉を投げないでほしいんです。そうやって離れていく人の背中にもし言葉をかけるなら、「また戻っておいでね」。それだけで十分だと思います。

裏切り者だと責めることはしないでほしい、彼らもいつか帰ってくるかもしれないので、その時は「俺が耐えてるから!俺が支えてるよ!」というスタンスでいて欲しいです。沼で精神を洗われるとは言いましたが、いつか返り咲けると願って耐えてください。

BF / EFC:いやあ……説得力があります。

サスーン / WBA:僕も今、自分に言い聞かせていますからね。

じお / LUFC:まあ、いつか帰れますよ。16年くらいかかりましたけども。

一同:(笑)

サスーン / WBA:勝てばいいんですよ!他所のチームのことだから簡単に言えちゃいますけども。日本のウェストブロムファンなんて、指で数えられるくらいの人数しかいないでしょうけど。でも、みんなこのスタンスで頑張っていますから。

BF / EFC:長くチームを追っていれば、いつの間にかいなくなってしまう人もいらっしゃいますよね。逆に私たちがTwitterで関わりあう方以外にも、熱心なサポーターさんはいるはずですしね。それでは続きまして、リーズ・ユナイテッドファンのじおさん、よろしくお願いします。

じお / LUFC:変なんですけど、気づいたらずっとクラブを追っていて。家族では弟がアーセナルサポーターなんです。一緒にプレミアリーグを観たりしましたが、それでアーセナルを応援することもなかったですし、応援する原動力は何か?というと、正直なところ分からないんですよね。わからないことで、モチベーションが上がりも下りもせず今も続いていると思います。

学んだこととしては……。プレーオフは本当に楽しいですよ。このシステムは最高です。チャンピオンシップだと、3位から6位までが参加して昇格のプレーオフが行われます。この6位以内を狙う、というのが非常に夢があるんですよね。最終的に行けなかったシーズンもありましたが、毎週が楽しみです。これでプレーオフに進出できたら尚更です。ホーム&アウェーのゲームはそれまでのリーグ戦とはまったく雰囲気が違いますからね。ただ、負けたら地獄です(笑)。

もうひとつは、「EFLは泥沼である」ということです。短期間で脱出しないと相当な沼にハマります。どこまでも奥が深い、もう底なし沼です。EFLって、チャンピオンシップで終わりではないですからね。EFLリーグ1、EFLリーグ2ってどんどん世界がありますし、なんならその下のナショナル・リーグという舞台まで行ったチームもありますから。これが恐ろしい世界です。逆に、落ちれば上がっていくしかないので、それはそれで楽しいです。そんなことを学びましたね。

BF / EFC:重みがある言葉ですね……。

じお / LUFC:でも、昇格争いは楽しいですよ!

◇現在地と、これから

BF / EFC:ここまで、各クラブの軌跡、皆さんにとっての天国と地獄、あるあるエピソードやモチベーションと学んできたことについて、皆さんにお話しいただきました。

最後に、この4クラブそれぞれの今後についてお話したいなと思います。

〈ウェストハム〉

東京 / WHU:うちは今ELを戦っています、という状況です(最終的にベスト4)。

West Ham United
@WestHam
Our Europa League campaign comes to an end in the semi-finals in Frankfurt.

#UEL | #SGEWHU
2022/05/06 05:55
312Retweet 4952Likes

クラブとしては直近30年くらいでも1番大きい転換期。モイーズ監督が変えてくれました。「チェコ人の投資家がクラブを買収する」と噂が出たり、来季は1億ポンド以上の投資をする可能性もあります。しばらく残留バトルや降格リスクとは無縁……とはいえ、ELやCLに3季くらい連続で出場して経済的に地固めしないと。これができないと危ない。ヨーロッパに安定して参戦することで資金を確保することが重要。2シーズン連続で失敗したら危ないです。バーンリーだって1度ELに行った年がありましたよね。これがもう1件続けば、という。継続性の問題です。

現場レベルで言うと、ライスの去就問題、人気銘柄になりそうなパブロ・フォルナルス、トマーシュ・ソウチェク、ジャラッド・ボーウェン、このあたりの契約延長問題。あとは、高齢化するミカイル・アントニオ、アーロン・クレスウェル、ウカシュ・ファビアンスキ、この後釜はどうするのか。これらの不安定要素はあるけれど、お先真っ暗ではない。そう僕は考えています。

〈ウェストブロムウィッチ〉

サスーン / WBA:ここまで触れてこなかったんですが、過去20年間でプレミアリーグのトップハーフ・フィニッシュが3度ありまして。一度は8位という順位がありました。リバプールに3ポイント差で、しかもシーズンダブルを達成したんです。もっとチヤホヤされても良かった。今でこそ、チャンピオンシップの2桁順位ですが、もう一度昇格して、クラブ最高順位を記録したりトップハーフに返り咲きたいと思っています。

West Bromwich Albion
@WBA
For a full photo gallery from Albion’s record-breaking season click here:
2013/05/23 02:19
4Retweet 8Likes

ウォルバーハンプトン・ワンダラーズなんかそういう感じだと思います。長く下部で過ごした中、プレミアリーグで良い順位をキープして、日本人のサポーターも増えて。ははーん、ていう感じなんですけど。別に、悔しくはないんですけどね、クソッタレ!とは思ってます(笑)。

じお / LUFC:完全に嫉妬心ですね(笑)。

サスーン / WBA:チヤホヤされたい!最近、『進撃の巨人』を読み直したので、「おそらく2年前の地獄を経験してきた者達だ、面構えが違う」に倣って、「サスーンさんも暗黒の20年間を過ごしてきたので、やっぱり面構えが違いますね!」って言われるようになりたいです(笑)。

〈リーズ・ユナイテッド〉

じお / LUFC:これからのビジョン、我々としての方針は残留が前提になりますが、ひとつとして「レスターモデル」というのがクラブの指標にあります。「ミラクル・レスター」ではなくて、その後のレスター・シティの成長モデルをビジョンに描いています。

これから伸びる残存価値のある選手を獲得する。活躍させて価値の高まった選手を売却し、その資金で新しい選手や、ユースカテゴリー、施設に投資してクラブを大きくし循環させる。ちゃんとした中堅クラブの足場を固め、その先にCLがある。クラブも明言しています。

今いるラフィーニャも適切なオファーがくればチームを離れる、お金をもらって投資する。ただ、価値が高まれば、オーナーはクラブを売却することも目標として視野に入れています。現在、パリ・サンジェルマンを率いるQSI(カタール・スポーツ・インベストメント)がクラブを買い取る噂が出たり、NFLの49ers(サンフランシスコ・フォーティーナイナーズ)がリーズの株式保有を増やしており、今では44%まで上昇、取引条項に将来的な売却ができるものも(解除条項とともに)含まれているとのことです。

少なくとも悪い事ばかりではなく、今の会長のように中長期的なビジネスの視点を持ってくれれば……同じようなアメリカ資本で成功している、リバプールのようになってくれたら嬉しいですね。

Leeds United
@LUFC
🇧🇷 Football is art!
2022/05/23 05:43
1297Retweet 18723Likes

〈エバートン〉

BF / EFC:まず残留が大前提だった中で、その先の24-25シーズンには新スタジアム完成が予定されています。とにかくトップリーグに残らないと、スタジアムが完成してもお客さんがいないよ……ということもあるでしょう。当然ながら、今までいた選手がいなくなることも起こり得ます。

また、残留したとしても、エバートンは財政的に苦しい状況にあります。エースのドミニク・カルヴァート=ルウィンやリシャーリソンが近いうちに出てしまうことも懸念されています。過去のルカクの時のように、大金を得ても意味のない補強を行ったり、オーナー主導で選手を連れてきたりするのではなく、身の丈に合った経営をしてもらいたいですね。

Everton
@Everton
🏟️ | As the initial overground structure emerges from newly-laid foundations at Bramley-Moore Dock, focus turns to the framework of our iconic new home.
2022/02/18 05:07
71Retweet 837Likes

BF / EFC:さて、皆さん本日は貴重なお話をたっぷりありがとうございました!とても濃密な時間を過ごせました。

◇最後に

 以上、イングランドフットボールクラブのファン4名による座談会の模様をお送りしてまいりました。これでも多くの部分で割愛し、お伝えできない箇所もございましたが、日本のエバトニアンひいては多くのフットボールファンにとって、親近感や新鮮味のある内容をお届けできていたら幸いです。

 応援するチームの強さ、成績、チーム状況にかかわらず、それぞれに魅力や悩み、喜びや葛藤があります。無数の要素が織り混ざるフットボールの面白さはピッチの中にも外にも転がっており、私たちの知らない世界がまだまだ広がっています。

 「天国と地獄」というテーマで残留争いや昇格・降格を軸にトークを行いましたが、優勝争いやヨーロッパの大会を争う上位対決はもちろん、下部リーグのみならずさらに奥深くまでフットボールの楽しみは共通しています。

 「フットボールは人生と同じ」……そんなフレーズを耳にすることがあると思います。浮き沈みある中で、楽しむことができる環境、趣味や思いを共有できる場に感謝しつつ、今後も愛や熱をもって追いかけていきたいですね。

 最後まで読んでいただいた皆様、そして今回の座談会に快く参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。また来シーズンも、フットボールファンにとって良き1年となりますように!

文:BF(@bf_goodison

***

ディ アハト第74回 座談会「エバトニアンの知らない世界」〜天国と地獄〜後半戦、お楽しみいただけましたか?

記事の感想については、TwitterなどのSNSでシェアいただけると励みになります。今後ともコンテンツの充実に努めますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

また、ディ アハト公式Twitterでは、新着記事だけでなく次回予告や関連情報についてもつぶやいております。ぜひフォローくださいませ!

ディ アハト編集部

無料で「ディ アハト」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
【第100回記念】あなたのサッカー人生における“ターニングポイント”は...
誰でも
【座談会】2024/25プレミアリーグ<昇格組特集>
誰でも
【座談会】2023/24 プレミアリーグ・ベストイレブン企画
誰でも
統計データから分析する「スイーパー・キーパー」~Jリーグを例に~
誰でも
サポーターの歩き方~サッカー観戦紀行~#3
誰でも
サポーターの歩き方~サッカー観戦紀行~#2
誰でも
サポーターの歩き方~サッカー観戦紀行~#1
誰でも
イッツ・アバウト・タイム~サッカーにおける「時間」と「音楽」を考察する...