“イニエスタの後継者” ペドリは何が凄いのか?
こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第7回は、U-24スペイン代表・ペドリの分析をお届けします。ぜひお楽しみください!
また、購読登録いただきますとディ アハトの新着記事を毎回メールにてお送りいたします。ご登録は無料で、ディ アハト編集部以外からのメールが届くことはございません。新着記事を見逃さないよう、ぜひ下記ボタンよりご登録いただけると幸いです。
ペドロ・ゴンザレス・ロペス。18歳でスペインの期待を一身に背負う男は、過去の伝説的な名選手たちと比較される圧倒的な存在になりつつある。フランス代表のキリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマンFC所属)、ノルウェー代表のアーリング・ブラウト・ハーランド(ボルシア・ドルトムント所属)らが新世代の象徴と考えられているが、ペドリは間違いなくその一角を担うことになりそうだ。
◇テネリフェ島から、欧州の頂点へ。
美しい自然で知られるテネリフェ島。そこが神童の故郷だ。2002年の11月ー偶然にも彼と比較されるアンドレス・イニエスタがFCバルセロナでトップチームデビューしてから数週間後に、ペドリは誕生する。ポルトガルのマデイラ島で育ったクリスティアーノ・ロナウドのように、ペドリも10,000人ほどが暮らす小さな街で日々を過ごしていく。祖父は小さなフットボールクラブの会長であり、レストランのオーナー。多くの親族がそこで働いており、父はアマチュアチームでゴールキーパーとしてもプレーしていた。何度かプロクラブのトライアルにも参加した父親と祖父の影響を受け、ペドリは地元のユースチームに入団する。
父が大好きだったミカエル・ラウドルップのビデオを何度も見返し、大好きだったイニエスタのプレーを模倣しながら、その少年は才能を磨いていく。傑出した理解力と技術を評価されていたペドリは、地元のクラブよりも規模の大きいJuventud Lagunaに移籍することになる。地元でもその実力は評判になっており、カナリア諸島の代表チームにも選抜されるようになっていた。
しかし、常にチームで一番小柄な選手だったペドリに注目するトップレベルのクラブは多くなかった。そんな中ラス・パルマスのユースに誘ったのは、当時アカデミーを統括していたフアン・マヌエル・ロドリゲス。指導経験豊かな名伯楽はペドリの実力を高く評価し、心配する両親を説得したペドリはクラブに加入。そこから、ペドリの成長は加速していく。
15歳でトップチームに昇格すると、不安視されていたフィジカル面の課題を感じさせないプレーを披露。大人しい性格の彼を年上の選手たちは積極的にサポートし、指揮官ペペ・メルはチームの中核としてペドリを起用するという大胆な判断を下す。スペイン2部リーグという過酷な戦場で、10代のペドリが「経験豊富なベテランのように」冷静なプレーで攻撃を牽引する姿は、多くのスカウトを驚愕させることになる。対戦した選手たちも彼の実力を認めており、当時ベティスでプレーしていたホアキン・サンチェスも「本当に彼は16歳なんですか?」とコメント。経験豊富なドリブラーも、ペドリを高く評価していた。
元スペイン代表のホアキンを翻弄した16歳にはスペインの強豪クラブだけでなく、ドルトムントなどの海外クラブもスカウトを派遣。幾つかのチームでのトライアルを経て、彼はFCバルセロナへの入団を決定する。
ペドリは欧州屈指の強豪でも主力に定着すると、堂々としたプレーでチームの中核に成長する。獲得寸前まで迫っていたレアル・マドリードが後悔するようなパフォーマンスで、目の肥えたスペインのサッカーファンを虜にしてしまったのだ。スペイン代表でも主軸として活躍し、EURO2020における優勝国イタリアとのゲームでは冷静なプレーでチームを牽引。大会の最優秀若手選手にも選ばれるなど、その存在感は別格の一言だ。
UEFA's team of Technical Observers have named Pedri as their Young Player of the Tournament 🇪🇸👏
#EURO2020 | #ESP
◇ペドリという選手の「圧倒的な強み」
For the Passer AND Receiver.
So a player who often receives passes in the pockets between the lines owns a high packing rating.
Busquets no surprise is one of the best in both areas. Pedri shows a great ability to receive in between the lines.
縦パスで相手選手をどれだけ通過したかを示すパッキング・レートは一時期注目された指標だが、ペドリは「受け手」として傑出した数値を示している。特に左サイドのハーフスペースでボールを引き出す技術に長けたペドリは、イニエスタのように相手の隙間で丁寧にボールをキープ。その位置からチームを前進させる役割を担う。その優れた潤滑油としてのスキルが「ペドリは自らがプレーするだけではなく、他の10人をプレーさせる」と表現される理由だ。
狭いスペースでボールを受けながら、ほとんど失わないペドリの驚異的なプレーを支えているの1つの強みが細かい視線のフェイクだ。ペドリは常に目線でのフェイクを意識しながらプレーしており、トレーニング中から対面する相手と駆け引きしながらトラップやパスの方向を変えている。相手の動きを観察するスキルに長ける彼は、周囲の動きだけでなく「対面する守備者」をも操ってしまうのだ。
イニエスタを想起させるようなボールキープを可能にしているのが、相手との間に身体を置く技術だ。シャビも「フィジカルに劣る選手が、最も重要視すべきスキル」と語っているように、スペインの中盤は「身体とボールの位置」に細かく気を配っている。その正確なプレーでボールを守りながら、ペドリは駆け引きを組み合わせて相手のプレッシングを外す「発展形」を最大の武器としている。それがクローズな身体の向きでのコントロールだ。
オープンな身体の向きでボールを受けることは視野を広げるが、一方で相手選手はそれを予測してスペースを消す。ペドリが最も驚異的なのは、それを逆手に取るように相手を外してしまう駆け引きの技術だ。動画でも前のスペースを使うイメージで相手を欺き、そこから身体を滑り込ませるようにボールを守りながらの突破に成功している。そして彼の小柄な体型は、普通の選手では難しい「窮屈な体勢からの正確なコントロール」を助けている。得意のヒールキックも、自分がクローズな状況でも周りを使っていく重要なプレーだ。
日本代表戦でも、ペドリの「クローズな局面でのコントロールスキル」が得点の起点となった。普通の選手であればゴール方向にボールをコントロールしたくなるところで、ペドリは狭い視野の方向にボールを置く。結果として日本選手のプレッシャーは軽減され、味方が「背後を取る時間」を作ったのだ。クローズな体勢から繰り出された予備動作の少ないスルーパスは、見事に日本の守備陣を崩した。
That's a game every 4 days, 17 hours, 31 minutes, 26 seconds, since 27 September 2020.
It's an issue throughout Spain's Olympics squad - Dani Olmo has played 62 games this season, Pau Torres 58, Unai Simón 57, Mikel Oyarzabal 56.
唯一の不安は、過度な負荷だろう。ペドリは298日で63試合に出場するという驚異的なペースで試合を重ねており、そのダメージは懸念だ。スペインの未来を担う男を守らなければならないという責任と、国民やサッカーファンからの期待。そのバランスを保っていくことが、スペイン代表にとっては悩みの種になりそうだ。
日本代表を親善試合で苦しめた神童は、再び優勝を目指す日本代表の前に現れる「強大な壁」になるのだろうか。
文:結城康平(@yuukikouhei)
ディ アハト第7回「“イニエスタの後継者” ペドリは何が凄いのか?」、お楽しみいただけましたか?
記事の感想については、TwitterなどのSNSでシェアいただけると励みになります。今後ともコンテンツの充実に努めますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
また、ディ アハト公式Twitterでは、新着記事だけでなく次回予告や関連情報についてもつぶやいております。ぜひフォローくださいませ!
ディ アハト編集部
すでに登録済みの方は こちら