感想戦 J1ドラフト会議2021の舞台裏

結城康平(@yuukikouhei)が毎年参加させていただいている、「J1ドラフト会議2021」の感想戦。今回は購読者限定で、事前に作っておいた指名候補選手のリストも特別公開します!!
ディ アハト編集部 2022.01.05
読者限定

こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第39回は、「J1ドラフト会議」の振り返り記事をお届けします。もはやオフシーズンの恒例企画となった?イベント、その裏ではどのような戦略が練られていたのでしょうか。参加者の1人、結城康平氏の視点でお送りします!

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  プロ野球のドラフト会議の形式で、各参加者が選手を指名していく「○○ドラフト会議」という企画。このJリーグ版の企画の運営・配信者であり、生粋のアーセナルFC&川崎フロンターレサポーターのせこ(@seko_gunners)さんにお呼びいただき、「J1ドラフト会議 2021」に参加いたしました。年々開催される度に規模の大きくなっている、興味深いファン企画です。

 2021シーズン版は12月23日に開催されました。Twitter上でハッシュタグ「#J1ドラフト会議2021」で検索いただければ、様子がわかるかと思います。また、イベントのルールと実際のドラフト会議の音声は上記リンクとなります。運営の皆様、今回はお誘いいただきましてありがとうございました。

 なお、サッカーキングさんも似たようなドラフト企画をやっていますが、こちらとは別の企画となっております。もちろん、こういった企画は一緒に盛り上げていきたいので、どちらも見てくれると嬉しいです。

 さて、前年度同様に「有識者枠(有識者とは言っていない)」でお誘いいただいたのですが、相変わらず国内リーグの試合を多くは見れていない状況。知識は前回の2020年同様に、参加者の中でも最下位という厳しい状態でスタートとなりました(毎年同じことを言っている気がします)。片や相手はJリーグを知り尽くした、各チームのサポーター。そして、フットボール分析界における「大御所」として知られる、らいかーると氏(@qwertyuiiopasd)とスケゴー氏(@sukego_fut)。錚々たる顔ぶれが揃っています。

 しかし、勝負に情けはありません。前回も同じように裏技を使いましたが、今回も「普通に勝負したら絶対6位指名くらいで長考してしまう」と考えた私は、知り合いのアジア地域スカウトからおすすめ選手のリストを貰いました。そこからデータ・プレー動画を「テスト前の一夜漬け」のようなイメージで予習。前回同様に「仕事か!と突っ込まれるような準備で、選手指名のプランを練りました。しかし、貰ったリストから自分用のリストに変更していくのも手慣れてきましたね。この技術が何の役に立つかは謎なのですが……。

 この自分用リストは、本記事の後半「登録者限定公開」部分で読者の皆さまにも共有いたします。

◇選択希望選手・監督

それでは、まずはドラフト会議にて私が指名したラインナップを見ていきたいと思います。

選択希望監督:アンジェ・ポステコグルー(セルティックFC)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 今回から、監督も指名可能になりました。あまり深く考えずに選んだのですが、日本→スコットランドで成功しているのは凄いことです。しかも環境を変えて、まだ1シーズンというから驚愕です。

 スコットランドのサポーターも懐疑的だったようですが、大爆発中の古橋亨梧とともに「信頼と安心のJリーグブランド」を確立しました。いくらなんでも極端な気もしますが、セルティックFCは日本人3人同時獲得を発表。「おいおい、シント=トロイデンか」というツッコミが聞こえてくるような気もしますが、Jリーグにとってもポジティブな存在のクラブになったかと思います。

 サッカーの内容としては、「ポジショナルプレー」の信奉者。主導権を握りながら流動的に陣形を変化させ、個々の選手が強みを発揮するチーム構成を目指しました。

第1巡選択希望選手:橘田 健人(川崎フロンターレ)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 中村憲剛氏と対談をさせていただいたから……という訳ではないのですが。川崎フロンターレは2020 / 21シーズンのJリーグ優勝チームであり、私も試合を観戦する機会が多いチームでした。前線で万能ストライカーとして活躍したレアンドロ・ダミアンに指名が集中することは予想の範疇で、代表でも活躍する実力派SB山根視来、セルティックへの移籍が決まったオールラウンダーの旗手怜央も上位指名の競合を予想していました。そのあたりも考慮し、中盤のバランサーである橘田選手を最初に指名。

 大卒で「中盤の底」という難しいポジションをこなしながら、成長を続ける若きMFは対人守備とスペースカバーで適切な判断を続けるだけでなく、基本に忠実な立ち位置でボールを引き出せることが魅力。ボールを保持するチームを作りたかったのですが、守備力も犠牲にしたくない……ということを考えた時に、機動力とポジショニングセンスを兼ね備える橘田選手は欠かせない存在でした。まだ若くて、底知れなさがあるところも魅力だなと。

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 予想通り、競合するダミアン。スケゴーさんの松岡、らいかーるとさんが外れで指名したM・ジュニオールは私のリストにも入っていました。特にM・ジュニオールは、指揮官との相性も抜群なので欲しかった……!

 ランゲラックや旗手、武藤・大迫・上田は上位指名で消えるだろう…という予想通りでした(そもそも諦めて、リストから外していました)。

第2巡選択希望選手:中野 伸哉(サガン鳥栖)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 中盤はクリエイタータイプというよりも守備重視で……という当初の予定もあり、中野選手を指名。若手とは思えないほど判断力と戦術眼に優れており、可変システムに慣れていることも大きかったです。

 3バックで左のセンターバックに中野選手を起用し、左WBとポジションをローテーションしながらボールを前進させ、チャンスがあれば崩すというのが理想でした。最後は川崎の砦ジェジエウと悩んだ結果「賢くて若い選手!決定!」という感じでしたが、結果的に競合しなくて助かったのかもしれません。

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 荒木は誰かが指名するだろうな……と予想していたのですが、らいかーるとさんの樋口、ロッドさんの岩田もリストから消えます。そして何より、最大の誤算はエンリケ・トレヴィザン。ツイキャスで絶叫してしまいましたが、守備の隠し玉として用意していたのに……センターバックがこれで薄くなる……という感じです。この指名から少し遅れて、参加者が左利きのセンターバック補強に走ります。 

第3巡選択希望選手:中谷 進之介(名古屋グランパス)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 3バックの中央を任せられる選手が少ないことは間違いなかったので(4バックの選択肢も残っていましたが)、名古屋の中谷選手を指名。カバーリングの技術に優れ、対人守備での寄せも抜群。プレーの安定感や統率力を考慮しても、国内トップレベルのセンターバックです。守備戦術を重視する傾向のあるイタリア人監督のチームで育ったセンターバック、というのも趣があります。

 しかも、まだ若いんですよね。25歳っていうイメージは全くないです。会社にあんなに安定感のある25歳がいたら、すべてを任せてしまいそうです。

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 ラグさん指名の酒井宏樹も悩んだのですが、センターバック優先に舵を切りました。また、コンサドーレ札幌の金子が誤算。抜群のクロスとドリブルを武器にする右WB、欲しかったです。

第4巡選択希望選手:小泉 佳穂(浦和レッズ)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 完全に、ここまで残っているとは……!?枠。ポジショナルプレーの実装に挑むチームで攻撃を牽引する、若きアタッカーです。ポジショニングのセンスに優れ、逆サイドにも顔を出すダビド・シルバのような浮遊感。そしてボールを持てば利他的に周りを使うことを優先しつつ、ドリブルで仕掛けることも可能な万能MFは、チームのどこに置いても機能すると判断。ポジショナルプレーのチームで活躍する、将棋好きのアタッカーというのもエモいです。盤面に小泉選手がいれば、居飛車でも振り飛車でも仕掛けられそうです。

 らいかーるとさんのエドゥアルド、ラグさんの吉田、ヒグチコータさんの田中聡は私のリストから消えました。田中聡は中盤で橘田と組ませたかったので、なかなか痛かったです。(まあでも、指名されますよね……)

第5巡選択希望選手:真瀬 拓海(ベガルタ仙台)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 酒井、金子が指名された今、本命の真瀬を奪われるとヤバい!ということで指名。この頃までは、右センターバックにセレッソの松田陸を置く超攻撃型フォーメーションを考えており、大外をスピードで勝負させようという考え。機動力に優れた切り込み隊長は、可変していく左サイドを起点にしたサイドチェンジを深いところで受けて貰おうかなと。孤立しても突破可能、という意味で欠かせないカードでした。

 スケゴーさんが何故か指名されていなかった前田(こちらは最初から諦めていた)を指名し、ヒグチコータさんがサンタナを指名。ゴール期待値3位のサンタナ、意外と下位指名でも……と考えていただけに誤算でした。

第6巡選択希望選手:古賀 太陽(柏レイソル)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 ここまで余っているとは・・・という補強。クレバーでビルドアップでもミスが少なく、サイドバックとセンターバックの両方に対応。まだ右センターバック松田という夢を追っているので、左サイドは堅実に…というイメージ。古賀なら左サイドで可変した局面では攻撃的なポジションにも適応可能だし、中野をWBにしてもOK!ということで「うーむ、これは予定していなかったがGOOD」という感じでした。

 らいかーるとさんの稲垣、96さんの脇坂、DBさんの鈴木彩艶、Akiさんの柴戸はリストから消えたメンバー。

第7巡選択希望選手:山本 悠樹(ガンバ大阪)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 守備的なMFを2枚並べる……とか言いながら、これである。完全にプランは崩壊。ガンバサポーターであるちくわさんの眼前で、ガンバのMFを指名する欲から逃れられなかった。山本選手はボールを置く位置が好きで、間違いなくポジショナルなチームであれば輝ける存在……なのですが、ここで「2ボランチは守備的な選手を置き、右センターバックに松田」というプランが崩壊しました。アスピリクエタみたいに松田がハーフスペースに走ってきて、そこからアーリーを狙うイメージだったのですが……その夢は一度、忘れることにしました。

 ラグさんの井手口、DBさんの森下、ちくわさんのパク・イルギュ、96さんのT・マルチンスはリストから……。

第8巡選択希望選手:東口 順昭(ガンバ大阪)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 山本選手を獲得し、ガンバの選手を考えていたらJリーグ屈指の守護神がまだ指名されていなかったので、つい……。プランが崩壊していたので、GKが思ったよりシュートを撃たれそうだな……と思い、シュートストッパーを急遽獲得しました。でも、いいよね。実力者だし。

 ラグさんの三竿、ロッドさんの藤田譲瑠チマはリストから消えています。

第9巡選択希望選手:ペレイラ(大分トリニータ)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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 松田センターバック案が潰えたので、対人の強い守備の選手……ということで、大分トリニータのペレイラ選手を。天皇杯決勝の、鬼気迫るパフォーマンスを評価しての指名です。実はここで古賀を獲得したことが地味に効いており、本職は中盤のペレイラをボランチにすることも可能になっています。

 らいかーるとさんの高木は、ポゼッション重視であれば選びたかったGKです。ヒグチコータさんの畑、96さんの伊藤も候補リストには名を連ねていました。スケゴーさん、男気のイニエスタ指名は痺れました(もう獲得できると思っていなかった枠)。

第10巡選択希望選手:M・サヴィオ(柏レイソル)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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隠し玉その1。柏での出場機会は少ないのですが、アウトサイド側にボールを置くようなプレーは独特で、瞬間的な切れ味とアイディアがコロンビア代表MFハメス・ロドリゲスを想起させるブラジル人アタッカー。徳島ヴォルティスの渡井理己と最後まで悩みましたが、彼を選出しました。右サイドは真瀬もいるので、オーバーラップを囮に切り返してくれそうなイメージが浮かんだので。

 リストからは、らいかーるとさんの家長、96さんの谷が抜けましたが、ダメージは少なめ。

第11巡選択希望選手:宮城 天(川崎フロンターレ)

画像はせこさんのTwitter(@seko_gunners)より

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隠し玉その2。センターフォワードということで、最初は松田からのクロスをパトリックかクレーべに競らせようと思っていたのですが、完全にそのプランも破綻したのでスカウトさんお勧め選手を。サイドの選手ですが、中央の広いスペースで使うと面白い成長を遂げるのでは?というスカウトさんの予想を信じて、センターフォワードに大抜擢。全体的に若いチームになったので、前線は「絶賛売り出し中」の若武者がピッタリかなと。そういう意味だと柏の細谷真大も欲しかったのですが、柏は2人指名済みだったんですよね。

◇フォーメーション&戦術

 ベースとなる陣形は、右センターバックにペレイラ、左センターバックに中野を配置する3-4-3。左サイドでは中野と古賀がローテーションし、右サイドではポジションを大きく変えずにペレイラが運んで、右WBの真瀬が大外のレーンで仕掛けるイメージです。ただし、このフォーメーションだと守備強度が怪しいので……ということでオプションを用意しています。

 簡単なオプションとなるのが、古賀と中野のポジションを交代する「最もシンプル」な陣形。左サイドの可変は威力を弱めるかもしれませんが、古賀の安定感が3バックには大きな助けになります。また、もう少し相手の攻撃が怖い場合はペレイラを中盤にコンバート。左サイドバックに中野、左センターバックに古賀、右センターバックに中谷、右サイドバックに真瀬という4バックにも変更可能です。この4バックの前にペレイラと橘田を並べ、山本が攻撃的なポジションに移動すれば「一気に守備重視」の4-3-3になります。

 前線の3人はあまりポジションに固執せず、流動的にプレーして貰うつもりです。そして、だからこその小泉というのもあります。彼なら、他の2人が自由に動いても賢く穴を埋めてくれるのではないかと。

◇指名候補者リスト

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