攻劇の目 先週の気になるジャッジ#8

審判活動の傍ら、様々なリーグやカテゴリーの試合におけるレフェリングの解説を行う攻劇(@kogekidogso)が、世界中の試合から注目のジャッジをピックアップ。各事象について、ルールの解説や見解を述べていくシリーズ記事です。
ディ アハト編集部 2022.04.08
誰でも

こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第55回は、先週行われた様々な試合の中から注目のジャッジを解説するシリーズ記事をお届けします。ぜひお楽しみください!

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Twitterを中心に様々なレフェリングの解説を行っている攻劇(@kogekidogso)が、前週に世界中の試合で起きた判定についての解説と見解を述べていく「攻劇の目」。

 公開されている動画に該当シーンが含まれる事象は、その動画リンクも掲載している。ぜひ、文章とともにじっくりご覧いただきたい。

1.J2リーグ第8節 ザスパクサツ群馬 vs 水戸ホーリーホック(4月3日)

事象:水戸がPKを獲得。キッカーは助走を始めたが、主審が他のフィールドプレーヤーに対してペナルティーエリア内に入らないように伝えた「まだよ」の声かけを自分へのものと勘違いし、途中で止まってしまった。主審は、PKのやり直しを認めた。

見解:非常に珍しい事象である。競技規則では、助走完了後のフェイントは認められていない。しかし、この事象では助走中に止まったため、この反則には該当しないと考えられる。

 「意図的に助走を途中でやめて、助走自体をやり直す」行為であれば認められないだろう。一方で本事象では、キッカーが主審の声かけを勘違いして偶発的に助走をやめてしまった。このため、最終的な筆者の結論としては、PKをやり直すという判断はコモンセンスとして否定されないだろうと考える。

 なお、PKとなるハンドの判定に関しては、妥当と考えられる。なぜなら、腕にボールが当たる前に当該DFの体にボールが当たっているが、これは意図的なプレーによるものではないためである。

2.ブンデスリーガ第28節 フライブルク vs バイエルンミュンヘン(4月2日)

事象:84分にバイエルンが交代を行った後、プレーが再開。しかし、その約15秒後、バイエルンの選手が12人フィールドにいることが判明し、試合が止まった。主審は交代で退出すべき選手を退かせ、ドロップボールで試合を再開した。

見解:ドイツでは日本とは異なり、チームスタッフが交代ボードを用意する方法が採用されている。チームスタッフが用意した交代ボードに誤りがあり、退くべき選手が気づけなかったことが根本的な原因であった。

 ただし、主審を中心とする審判団は交代で退く選手がフィールドを離れたことを確認する必要があるため、審判団のミスでもある。選手に非はないため、主審がカードを提示しなかったことに関しては問題ないといえるだろう。

攻劇
@kogekidogso
昨シーズンのJ2で大宮の選手が一時12人フィールドにいることがありましたが、今朝のフライブルク×バイエルンでも同様の事態が発生

今回は交代ボードに誤った番号が掲示されたため、退くべき選手が気づかず約15秒間バイエルンの選手が12人フィールドにいる状態になったとのことです
Collinas Erben @CollinasErben
Zum Wechselchaos bei #SCFFCB kurz vor Schluss der Versuch einer Einschätzung. Süle und Sabitzer kamen für Tolisso und Coman. Letzterer bekam aber zunächst nicht mit, das er raus sollte (laut Nagelsmann, weil auf der Tafel eine falsche Nummer angezeigt wurde). (1/13)
2022/04/03 08:53
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3.J1リーグ第6節 柏レイソル vs ジュビロ磐田(4月2日)

事象:柏の先制ゴールのシーン。柏14番にハンドの反則疑惑があったが、得点は認められた。

見解:この事象では、VARがゴールチェックをする範囲であるAPP(Attacking Possession Phase)に含まれるのか、そしてハンドの反則なのかどうか、の2点が鍵になる。

 後者のハンドの反則については、腕にボールが当たったかどうかの確認が、中継映像では判断できない。前者については、柏14番が後方に大きく、かつミドルサードにボールを下げたため、APPに入るか否かの判断は非常に難しい。得点が認められた理由は不明だが、中継映像のみで判断すると、この判定は受け入れられ得ると感じられた。

4.ラ・リーガ第30節 ヘタフェ vs マジョルカ(4月2日)

事象:マジョルカ5番の腕にボールが当たった事象に、VARが介入。レビューの結果、主審はPKと判定した。

見解:レビューで用いた映像では、どちらの腕に当たったのかを示す証拠はないと考えられる。右腕であれば不自然に体を大きく見せているためハンドの反則になるが、左腕ならば自然な位置としてノーファウルだろう。筆者は、VARの介入は不適切な事象だと考える。

5.関東リーグ1部前期第1節 東邦チタニウム vs 南葛SC(4月2日)

事象:東邦GKがペナルティーエリア外でファウルをし、主審はイエローカードを提示した。

見解:ペナルティーエリアの横幅よりも外で起きたファウルではあるが、このファウルがなければゴールは無人であり、ファウルを受けた選手の直前のコントロールが大きすぎるわけでもない。このため、DOGSOに該当する事象だと考えられる。よって、レッドカードが示されるべきだというのが筆者の見解だ。

シリーズ第8回となる本記事では、以上の5事象を紹介させていただいた。また、レフェリングを楽しむうえで欠かせない「VAR」についての記事も、本ニュースレターにて公開している。気になった方やもう一度復習したい方は、ぜひこちらも目を通してみてほしい。

攻劇の目 #7はこちら! ↓

  文:攻劇(@kogekidogso)  

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