攻劇の目 先週の気になるジャッジ#14

審判活動の傍ら、様々なリーグやカテゴリーの試合におけるレフェリングの解説を行う攻劇(@kogekidogso)が、世界中の試合から注目のジャッジをピックアップ。各事象について、ルールの解説や見解を述べていくシリーズ記事です。
ディ アハト編集部 2022.06.02
誰でも

こんにちは、ディ アハト編集部です。本ニュースレターをお読みくださりありがとうございます。第70回は、先週行われた様々な試合の中から注目のジャッジを解説するシリーズ記事をお届けします。ぜひお楽しみください!

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Twitterを中心に様々なレフェリングの解説を行っている攻劇(@kogekidogso)が、前週に世界中の試合で起きた判定についての解説と見解を述べていく「攻劇の目」。

公開されている動画に該当シーンが含まれる事象は、その動画リンクも掲載している。ぜひ、文章とともにじっくりご覧いただきたい。

1.UEFAチャンピオンズリーグ決勝 リバプール vs レアル・マドリード(5月28日)

事象:43分のシーン。背後に抜け出したレアル9番が中へ折り返し、混戦の末、ボールは再び同じ選手へ。これを冷静にゴールへ流し込むも、オフサイドと判定された。

 VARチェックに長い時間を要するも、レビューには至らず。結果的にオフサイドの判定が確定され、ゴールは認められなかった。

見解:論点は、レアル15番がボールに触れたのか、そしてリバプールの選手2人がボールに触れたことをどう判断するかの2点。そもそもレアルの15番がボールに触れていない場合は、レアル9番がオフサイドになることはない。だが、試合映像をよく見ると、彼が左足で触れていることがわかる。VARチェックに時間がかかったのは、この部分の確認を慎重に行ったことが理由だと推測される。

 次に、リバプールの2選手がボールに触れた点を見てみよう。この2人の選手のいずれかが「意図的にプレー」をしていた場合、オフサイドがキャンセルされる。

 最初に触れたのは5番であり、彼はスライディングで正面からボールに触れた。この動きから「意図的なプレー」だと感じられるかもしれないが、競技規則が示すそれには該当しない。なぜなら、レアル15番が至近距離からボールに触れており、その触れられたボールに対してのアクションではなく、もともと体を投げ出していたからである。「意図的なプレー」とは、ボールの軌道を見てどう触れるかを考え、実際に触れることを意味すると理解していただければ、今回のシーンでは該当しないことがわかるだろう。

 その後3番にボールが当たるが、これは意図的にどう触れるかを考えたものではなく、至近距離にいる味方からボールが来て跳ね返った形だ。そのため、こちらも「意図的なプレー」には該当しない。

 したがって、以上のことから本事象におけるオフサイドの判定は正しいというのが筆者の見解だ。余談だが、元選手を中心に「得点を認めるべきだった」という意見が出ており、一方で元レフェリーや競技規則に詳しいメディアを中心には「正しい判定だ」という意見が出ている点は、非常に興味深い。

2.EFLチャンピオンシップ プレーオフ決勝 ハダースフィールド vs ノッティンガムフォレスト(5月29日)

事象:ハダースフィールド3番がペナルティーエリア内で転倒。主審はPKではなくシミュレーションと判定し、イエローカードを提示した。

見解:筆者の見解を最初に示すと、「シミュレーションではないが、PKを与えない判定は支持できる」というものだ。足の接触はあると感じられるため、間違いなくノーファウルだとは考えられない。そのため、シミュレーションで警告することは厳しい判定だと感じられた。

 一方で、接触の強度は強いものではないと考えられるため、PKを与えないという判定に関しては尊重したい。VARはシミュレーションではないと考えたかもしれないが、介入基準は「シミュレーションの判定が誤りかどうか」ではなく、「PKを与えない判定が誤りかどうか」であるため、介入は難しいだろう。ただ、接触の存在を示す明確な証拠がないと判断したのであれば、シミュレーションの判断を支持すると考えられる。

3.EFLチャンピオンシップ プレーオフ決勝 ハダースフィールド vs ノッティンガムフォレスト(5月29日)

事象:再びハダースフィールドにPKを与えるべきではないかという事象。主審はノーファウルと判定した。

見解:タックルしたノッティンガムフォレスト15番は、ボールに触れていない。しかし、ハダースフィールド8番は相手選手が足を出すであろう位置に足を置き、自らコンタクトを生み出したように感じられる。そのため、ノーファウル判定は妥当だろう。

4.明治安田生命J1リーグ 第16節 ジュビロ磐田 vs 横浜F・マリノス(5月29日)

事象:90+2分のシーン。マリノス14番が磐田36番と接触し転倒。ただ、ノーファウルと判定された。

見解:接触はペナルティーエリアの外であるため、PKではない。一方で、プレーの方向がやや外向きであるものの、決定的な得点機会の状況であると考えられる。そのため、ファウルであれば退場となる反則だというのが筆者の見解だ。

 接触については、上半身を見ればフットボールコンタクトと判断できるが、足の接触は遅れてつまずかせたものだと感じられる。そのため、ファウルを取るべきだと考えられる。VARがPKの可能性だけでなく1発退場の可能性も判断できていたのかは、気になるところだ。

シリーズ第14回となる本記事では、以上の4事象を紹介させていただいた。また、レフェリングを楽しむうえで欠かせない「VAR」についての記事も、本ニュースレターにて公開している。気になった方やもう一度復習したい方は、ぜひこちらも目を通してみてほしい。

攻劇の目 #13はこちら! ↓

文:攻劇(@kogekidogso) 

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